(アーユルヴェーダサロンの環境を整える)
アーユルヴェーダサロンを営むには、さて、どんな場所が最適なのでしょう。
最低限必要な設備は何なのか。
何事もゼロから始めるとなるとなかなか大変です。
参考までに、南インド発祥のアーユルヴェーダを提供している「カイラリ社」のデイスパのモデル図面を見てみましょう。
「カイラリ」という名前は、「kairali」と記し、「ケラーラの」という意味です。
南インド・ケラーラ州からやってきた実践アーユルヴェーダは、こんな場所で行われるのが理想的ということになります。
これは、あくまでもウエルネス・スパのモデルであり、クリニックとなるとまた違う大掛かりなものとなるので、我々セラピストレベルで用意をする空間としては、こちらが参考になると思います。
クライアント一人につき最低限、必要なスペースを箇条書きにしてみると、
1. 洋服を着替え身支度を整えるパウダールーム。
2. トイレ。
3. シャワー。
4. トリートメント・ルームの中には、マッサージテーブル、オイルを温めるための器具、トリートメント後発汗を促すためのスチーム・キャビン、水回りおよび収納スペース。
5. これにカウンセリングルームがあれば良いことになります。
長年のコンサルティングの仕事で、一番多い質問が「シャワー設備がないとアーユルヴェーダ・スパはできないか?」というものです。
これについては私は、個人的にはシャワー設備が無いと難しいと考えています。
アーユルヴェーダの基本トリートメントといえば、オイルマッサージ(アビアンガム)とその後の発汗(スウェダナム)がセットになっているものです。
オイルマッサージの後、体を温め、汗をかくことで、余分な汗や皮脂とともに不要な老廃物が排出されます。
これによって、新陳代謝が活発になり、新しい細胞が生まれるのを助けます。
結果として老化防止、いわゆるアンチエイジングにつながるわけです。
こうした理由から、高血圧など、何らかのトラブルがある場合を除いて、マッサージの後はじんわり発汗をするのがおすすめです。
発汗後は、速やかにシャワーを浴びで、余計なものを流した方が良いのは事実です。
汗や余計な油は、かゆみの原因になったり、肌の炎症を引き起こす引き金になったりするからです。
そもそも南インドに伝わる古代レシピのアーユルヴェーダオイルは、乳成分が主体です。
ベースのオイルやハーブと一緒に煮込んでいくと、なぜか半透明のオイルができます。
こうしたトリートメント・オイルは、有効成分の身体への吸収もよく、自然な形で乳化しているオイルなので、その後の洗い流しも非常に楽です。
変なベタつきもなく、専用のハーバル・ウォッシュ・パウダーを使って洗い流せば、スッキリ爽やかに仕上がり、わずかに残った適度な油分が皮膚を保護してくれるのです。
南インドでは、ドローニというかなり大きな木製のベッドの上で、二人掛かりでトリートメントを行い、その後の発汗はスチームキャビンに移動します。
硬い木製ベッドでのトリートメントは40分が限界だといいます。
だから、マッサージは二人掛かりで一気に行うのです。
体勢を変えながら、全身くまなくマッサージする現地のトリートメントは、慣れてくれば、歪んだ身体も正しく整ってくるように思います。
しかし、昔、日本にこの木製ベッドを輸入した経験上、日本ではかなり難しいと感じました。
繊細な日本人には、寒い冬など、硬い木の感触が身体にこたえます。
スチーム・キャビンも現地ではとても大掛かりなものなので、私はいわゆるエステティックサロンで使用されているヒートマットで代用しています。
これなら、冬の寒い時期でも、下からポカポカと心地よく、発汗もそのままスムーズです。
「kairali」の代表も、日本のハイテクマットを見て微笑んでいました。
アーユルヴェーダの本を読んでも、発汗については色々な方法が紹介されているので、これもありかなと思うわけです。
さて、アーユルヴェーダのトリートメントでは、身体に施すものは全て温めるのが基本です。
現地では、オイルなどを「ウルリ」という鍋に入れて、温めてから使用します。
この「ウルリ」、保温効果もあり、慣れると使い心地も良いのですが、手軽に行いたい場合は、湯煎がおすすめです。
とにかく、体温よりも温めて、肌に浸透しやすい状態にしてからトリートメントを行うのが、絶対条件なのです。
以上、アーユルヴェーダスパを運営するための、必要最低限の設備について述べてきましたが、ここからは、もう少し枠を広げた、アーユルヴェーダスパの環境づくりについて考えてみましょう。
何と言っても、アーユルヴェーダでは、五感を癒すための環境づくりが大切です。
写真は、南インドのカイラリ・アーユルヴェディック・ヒーリング・ビレッジの様子です。
ゲストは、個別のビラに滞在し、文字通り自然の中に身をおいてもらいます。
小鳥のさえずり、木々が揺れる風の音、小川のせせらぎ、など自然の音の中で過ごしてもらうのです。
川はわざわざ人口の川を巡らせてあります(聴覚)。
色とりどりの花が咲き、ハーブやスパイス、果物の樹木が茂っています(視覚)。
ゲストは自分のビラから、トリートメントルームや、レストラン、ヨガセンター、プールなど、必要な場所に歩いて向かいます。
滞在中、知らず知らずに適度な運動も行えるようになっているわけです(触覚)。
食事はヴェジタリアン・メニュー、日々ヴェジタリアンを推奨しているわけではなく、滞在中のトリートメントの効果を上げるための配慮であり、ゲストに応じて全てがカスタマイズされています。
場合によっては、サラダやフルーツをたくさん食べるようにと指示されたり、また、フルーツまでもがスチームされることもあります(嗅覚、味覚)。
では、これを参考に日本のデイスパについて考えてみましょう。
すぐ思い浮かぶこととしては、まず、緑や花などの自然のものを置いてみる、そして、癒しの音楽を流してみる、ウエルカムドリンクやアフターティなどのサービスを考える、などであると思います。
これに関しては、いろいろ創意工夫し、セラピストの腕に見せ所で楽しみでもあります。
(最後に、、、)
ちょっと前まで「隠れ家サロン」という言葉をよく耳にしました。
「自分の隠れ家」=「アナザーワールド」を持つというのは心のゆとりにつながります。
例えばディズニーランドに行くというのもその一例です。
日常の生活から離れて、幻想の世界に一瞬でも浸ることで、人はストレスが解消されるのです。
ゲストがスパにいらして、トリートメントを受け、リラックスされることは当然のことです。
それにプラス、普段とは違うホスピタリティ溢れた空間に身をおいてもらう、つまりゲストに「アナザーワールド」を提供することで、セラピストはそのゲストの人生の残された時間の癒しとなって、生涯の友としてつながっていくことができるのです。
ぜひ、これを肝に命じて頑張りましょう。
また、「アナザーワールド」は一つに限りません。
いわゆる”ワオ(驚きや 感激)”がゲストにたくさん起きることで、感動も強まり、満足度もアップするのです。
【コラム筆者】
アーユルヴェーダスパ・カイラリ 西田若葉さん
(アユス)
http://www.ayus.co.jp/
(アーユルヴェーダスパ・カイラリ)
http://www.ayus.co.jp/spakairali/
(カイラリ学院日本校・アーユルヴェーダスクール)
http://www.ayus.co.jp/kairali/
(アーユルヴェーダスパ・カイラリ/Facebook)
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