|
インド・プネにあるワゴリ・アーユルヴェーダ大学に留学中の大橋美和子さんより、現地のアーユルヴェーダ事情や生活の様子についてご紹介くださいます。
(大橋美和子さん)
薬剤師。2009年からインド・プネのワゴリ・アーユルヴェーダ大学に留学中。
|
今月、9月9日は「ガネーシャ・チャトゥルティ」とよばれる祭日でした。
新月から4日目の9日から、満月まで11日間にわたって町中のガネーシャがお祭りされます。
毎年、だいたい8月下旬から9月にかけて行われ、インドのお祭りは今でも月の暦に従っています。
ワゴリでも、大学の中に特別な祭壇を設けて飾りつけをしています。
この時期はまだ雨季ですが、この頃になると少しやわらかい雨音がします。
6~7月は土砂降りの夕立のような雨でしたが、今は秋のようなひんやりした空気です。
日本は、いつにも増して暑い夏だったときいていましたが、こちらの真夏の暑さは3~5月頃が一番厳しく、7月以降は長袖を羽織るほどの涼しさです。
さて、前回のコラム以降、こちらではいくつかのお祭りやお祝い事がありました。
ひとつは、7月の満月の日、牛小屋と院内薬局がオープンしました。
この牛小屋は、ワゴリで純インド産の牛を飼育するために作られました。
牛の生乳からギーやバター、ミルク、ラッシー、などを作ります。
また、尿もお薬に使われたり、牛糞も薬を釜で焼くときの燃料にしたりします。
そのためばかりではありませんが、ここでの牛には、残飯はやらず、草やとうもろこしだけで育てます。
この牛小屋プロジェクトもここの施設を開いたマハラジの計画だったそうです。
マハラジのふるくからの弟子であるパンドゥおじさんは、インドの伝統的な布を腰に巻くスタイルで、ワゴリの広い敷地中を回って畑や薬草園、牛や動物たちの世話をしています。
先日も子牛を探しに、プラバダイと市場まで行ってきたそうです。
オープンの日は、牛小屋にマンゴーの葉っぱや、とうもろこしを飾りつけて、牛たち一頭ずつにお祈りを捧げました。
よくインドの人たちが額に赤いマークをつけていますが、お祈りをした後、同じ様に牛の額に赤い粉を塗っていきます。
先生たちも、敬意を表して小屋には、靴を脱いではだしで上がります。
牛糞や尿があっても、意外とそんなに臭くありません。
ちなみに、昨年インドの聖者シャンカラチャーリアがこられたときには、お寺の前の入り口をこの牛たちの牛糞で塗り固めて舗装していましたが、そのときも、意外に清潔な感じを覚え驚いたほどです。
お祈りの後は、お供え物の甘いお団子を牛にも食べてもらいます。
牛の口にもっていってもそれほど興味のない様子でしたが、一口位は食べてくれます。
ちなみに、学食では毎日絞りたてのミルクを飲むことができます。
あたためたミルクには、とても甘みがあって美味しいのですが、それでもインドの人達は、たっぷりの砂糖を入れて飲みます。
またこの吉日には、がん研究所のある外来病院内に薬局もオープンしました。
まだ品物はあまりなく、がらんとしています。
まずは、関連の書類などを薬の神様であるダノワンタリ神の前に広げ、牛と同じく赤い粉でちょこんと点をつけて、神様に捧げます。
牛のギー(精製バター)から出来た明かりを灯して、お祈りをします。
やはり甘いものを捧げて、お祈りの後、みんなに振舞われました。
今回は、日本の方からいただいた羊羹があり、皆で美味しくいただきました。
こちらのお団子も豆からできているので、なんとなく似ているようですが、インドの団子の甘さは、日本人には甘すぎるくらいです。
私は久しぶりに頂いた日本の甘い味に、ホッとしました。
そして、お昼には、お寺でお祭りのお食事が振舞われました。
黒い石のお墓は、マハラジが亡くなられた時に、ここから数千年にわたりワゴリを見守るという約束をされたところです。
左手の岩の様なところに、マハラジのお師匠さんであるマリ・マハラジという聖者が姿を現したのを見たマハラジが、この地からインドの伝統音楽・医学を世界中に発信する場所を開くといわれたそうです。
それ以来、ここはサマディという聖なる場所としてお祀りされています。
毎朝、毎夕、サダナンダ先生もお祈りをしてから仕事を始め、仕事を終えます。
気になることや問題があったらいつでもここにきてマハラジに話しをすると聞いてくださっているといわれます。
テスト前などは、学生も訪れます。
ここに毎日プラバタイがお食事を供え、その後、私たちのお鍋にお下がりを混ぜて振舞ってくれるのです。
今日は、特別大勢なので、お寺の縁側でいただきます。
葉っぱでできた使い捨てのお皿にスープとご飯から順にご飯が振舞われます。
プラバタイや他の先生がひとりひとりお鍋を持って回ってくれます。
お替りもどんどん回って来るのでついつい食べ過ぎてしまうほどの量です。
そしてお祭りの日は終わります。
・ ・ ・
8月に入ってから、サダナンダ先生の次男であるスクマール先生の赤ちゃんの1歳のお祝いも催されました。
こちらはプネ市内のハイアットホテルの宴会場を貸し切って盛大に行われ、一段派手なお祝いで私も驚きました。
まず、入り口には、お誕生日のスメダくんの写真が両脇に飾られます。
その向こうには、ビュッフェスタイルのお料理が用意されていますが、最初はまだお食事にはありつけません、先ずはお祝いから始めます。
宴会場の入り口には、インドのキャラクターの看板に風船の飾り付けがあり、中に入ると畳6帖もあるかと思われる、大きなスメダくんの写真がステージに!!
その脇には、子供たちが遊べるちょっとした遊園地のような遊具があったり、手にスパイダーマンや好きなキャラクターを書いてくれるお兄さんがいたりと盛りだくさんです。
中にはなんとドラえもん(?!)のような青い着ぐるみもいます。
でも、中身はインド人なので、ボーっと立っていて、まったく雰囲気は違います。
突然、司会者が現れ、マラティー語でなにやら出席者全員を輪にしてゲームを始めました。
マラティー語と英語で交互に1・2・3と数えていくようです。
ひとり目が「いち!」とマラティーで言えば、次の人は「ツー!」と英語で、次の人はまた「さん!」とマラティー語で言わなくてはならないルールの様です。
間違えたら、着席します。
そうしている間に、ちょっとしたスナックをお皿にのせたボーイさんが回ってきています。
ゲームの後は手品、それから人形劇と続いて、いよいよお誕生日ケーキの登場!!
どうやらスメダくんの一番のお気に入りは、くまのプーさんの様で、ケーキもプーさんの形の大きなものです。
切り分けられたケーキをお皿で配られて、それからようやくお料理です。
会場の外のビュッフェで好きなお料理をたくさん頂きました。
そのビュッフェのお料理の壁に設置されたスクリーンにまでスメダくんの写真がありました!!
こちらのお誕生日のお祝いは、特に1歳をこうして派手にお祝いするようです。
皆でにぎやかにお祝いをして、お腹いっぱい、幸せな気分で帰ります。
・ ・ ・
そして、今月、いよいよガネーシャ祭り!!
一年のなかでも一番派手に、盛大に行われる催しです。
この時期、特別に大きなガネーシャを招いて、各家庭は勿論、町内をあげてお祭りするので、町のあちこちでガネーシャが売られます。
街角にも「ガネーシャ特設ステージ」が建設されます。
ガネーシャを買ったら、お寺に行ってお祈りをしてから持ち帰り、その晩から毎日お祭りを始めます。
どこの家からもお祭りのにぎやかな声が聞こえ、街角の大きなガネーシャに近所の人たちが集まってお祈りをしたりと、町全体がお祭り一色になります。
こうして「ガネーシャ祭り」に続いて、ダスラ、ディワリ、クリスマス、正月、とお祭り行事が続いて、終わった頃にまた暑い夏がやってきます。
なんだか、暑い時期以外は、いつもお祭りがあるような感じがします。
インドでは、映画とお祭りが一番の娯楽です。
先生たちの休暇の行く先も、お寺参りだったり。
でも、最近は大きなショッピングモールができたり、ずいぶん町の様子も変わってきました。
特に、ここ2~3年の変化が大きいように思います。
メイン通りも、渋滞する程、車が溢れるようにもなりました。
最近、一番驚いたのは、プネ市内の私の家のすぐ近く、OSHOインターナショナル・メディテーションリゾートの側に、シアトル発祥で有名な某コーヒーチェーンが出店したことです。
なんだかどんどん欧米化しているインドの様子に、便利になって嬉しい反面、昔ながらのお祭りが懐かしく、こうした伝統がこれからも続いてくれたらいいなあと思います。
アーユルヴェーダの知恵も5000年といわれますが、インドでもここのところ、生活環境の大きな変化により食事や生活習慣を見直す必要がでているようです。
テレビの取材の時にも紹介していた、呼吸法などは、簡単な運動です。
インドでは、アーユルヴェーダの病院に限らず、よく知られた有名な健康法なので、あらためて、ご紹介しておきます。
ご紹介したのては「カパラバティ」という腹式呼吸でした。
・お腹を前後に「ふっ」「ふっ」と鼻から息を思いっきり吐いて、自然に吸います。
これは「ジーワナサンジワニ」、つまり長寿をもたらすともいわれます。
・始めは、50回行って1~2分程休憩し、また続けて50回、これを毎朝行います。
・1週間経ったところで回数を増やし、100回 + 1~2分程の休憩 + 100回を続けます。
・翌週には、200 + 1~2分程の休憩 + 200回。
・更に翌週には、300回 + 1~2分程の休憩 + 300回。
これを、1000回 + 1~2分程の休憩 + 1000回まで増やしていきます。
この「カパラバティ」は、視床下部に働きかけて、心臓、肺のマッサージにもなります。
マラソン同様、多量の酸素が細胞に行き渡り、エンドルフィンが分泌され、1日をリラックスして始められるといわれます。
また、セラトニン、メラトニン、アセチルコリンの分泌が活性化されるため、うつや不安、ストレスのあるときにも効果的です。
前立腺疾患、子宮頸部疾患、高血圧、高コレステロール、肥満、高脂血症などに有効です。
ポイントは、吐く息と吸う息の間に起こる「間」を感じる事です。
毎日行っているうちに、その「間」が少しずつのびてくる感じがあります。
息をしているわけでも、止めているわけでもないのですが、この瞬間は、吐く息と吸う息のちょうどバランスが取れている状態にあるといわれます。
「カパラバティ」は毎日数分でよいのですが、毎日続けることが効果的です。
ただ、女性の月経期間中や妊娠中は控えましょう。
アーユルヴェーダの知識が、日本でも役立ちますように。
インド・プネのワゴリ・アーユルヴェーダ大学より。
大橋美和子
(お知らせ)
スクマール先生と薬局の4人のドクター、そしてプラバタイ(Dr.プラバ)が10月末に来日します。
私も通訳として数週間の予定で、帰国します。
10月31(木)から11月2日(土)東京ビッグサイトのイベント「BioFach Japan(ビオファ ジャパン) オーガニックEXPO 2013」にて、ワゴリで栽培されるアーユルヴェーダハーブ原料や製品を出展する予定です。
http://biofach.jp/ja/summary.php
またこの機会に、いくつかのセミナーも開催されます。
11月3日(日)Dr.プラバによるアーユルヴェーダ「生理痛」「貧血」対策
11月6日(水)Dr.プラバによるアーユルヴェーダ「更年期のりきり法」
11月4日(月・祝)Dr.スクマールによるオイル講座、消化力のすべて
11月8日(金)Dr.スクマールによるアーユルヴェーダ健康法アドバイス
※脈診で有名なサダナンダ先生も、9月19日から9月25日の間、健康相談ワークショップを行われます。
※いずれも東京です。
※詳しくは、
http://satvik.jp/まで。
この機会に皆様にお会いできると嬉しいです。
先生方も、東京行きを今からとても楽しみにされています。