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インド・プネにあるワゴリ・アーユルヴェーダ大学に留学中の大橋美和子さんより、現地のアーユルヴェーダ事情や生活の様子についてご紹介くださいます。
(大橋美和子さん)
薬剤師。2009年からインド・プネのワゴリ・アーユルヴェーダ大学に留学中。
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インドの暑い"春!!"の真っ只中です。
正確に言うと、すでに「春」も後半、もうすぐ「夏」の気配です。
今回は、インドの季節、特に「春」をご紹介したいと思います。
インドの季節は6シーズンにわかれています。
冬は2シーズン。
11月中旬から1月中旬までを「へーマンタルトゥ『初冬』」と呼びます(同様に2ヶ月毎の中旬がおおよその変わり目となります)。
1月から3月までを「シシーラルトゥ『冬』」。
それから春が1シーズン。
3月から5月までを「ヴァサンタルトゥ『春』」。
それから日本でいうところの梅雨を迎えることなく、夏になります。
5月から7月までを「グリシュマルトゥ『夏』」。
暑い熱を冷ますかの如く、雨がザーっと降る雨季が続きます。
7月から9月までを「ワルシャ『雨季』」。
それからリトル・サマーといわれる乾期に入ります。
9月から11月までを「シャラダ『秋』」。
さらに各6シーズンを前半の1ヶ月、後半の1ヶ月と分けて呼び名があり、12ヶ月で1年です。
これら6つのシーズンは、インド全土に共通しているとはいえ、とても広いインド。
デリー以北に1月に訪れた時には、ストーブが欠かせないくらいの寒さで驚きましたが、西インドに位置するプーネ市は、冬でも暖房器具を使ったことがありません。
そして、日本とずいぶん違うなあと感じられるのが、春です。
デカン高原に位置する西インドにあるプーネ市では、2月も下旬になると日差しがとても強く感じられます。
冬の寒さ、といっても昼間は、半袖や袖なしで過ごせるくらいの冬なのですが、日が沈むと肌寒く、セーターやジャケットを羽織ります。
それが、夜になってもだんだんと長袖を必要としなくなってくるのが2月の下旬から3月頃。
店先には、少し時期の早いマンゴーがお目見えします。
まだまだ割高で、甘さもいまひとつですが。
それから、どんどん暑さを増して、4月になると春の半ばのはずなのに、すっかり夏の気配です。
日本で春といえば、まだ肌寒い日があったり、暖かい日があったり、すこしずつあたたかくなっていった印象なのですが、シャワーを浴びて、髪をドライヤーで乾かさないで外を歩いても10分もするとほぼ完全に乾いています。
今年は、それほど寒くない冬だったせいか、例年以上に蚊が多いようで、本格的な夏を前にして、すでに蚊に悩まされています。
日本でいうところの梅雨のような季節がなく、いつのまにか「マンゴー・シーズン=夏」を迎えます。
それから一雨ざあっと降り、雨期に入ると、おいしい「マンゴー・シーズン=夏」は終わりを告げます。
雨期になってもマンゴーは店先にあり、価格もぐっと下がるのですが、酸味が出て、中には、虫がいることもあるので旬は過ぎているから美味しくないといわれます。
このように、インドの季節を今の私の生活の身近なところからご紹介させていただきましたが、これを数千年前の文献を参照すると、もっと具体的で驚かされます。
たとえば、アーユルヴェーダの三大古典の一つ「アシュタンガサングラハ」の中で、第4章に、季節ごとの過ごし方についてまとめられています。
そこでは、まず「季節」とは、私たちの「命・いのち」にどう関わっているのかはっきりと述べています。
つまり季節とは、時間によるものですが、時間とは何でしょうか?と。
「アシュタンガサングラハ」による定義では、
「時間とは、神聖なものであり、始まりもなければ終わりもない。それは、過去の行いが積み重なったもの。地水火風空の5要素(マハーブータ)が変容することによって、全生物の誕生と死を生じる元となり、各季節の長所、短所を生み、すべての物質の味や効能の原因となり、体やドーシャ(体の構成バランス)の強さを引き出したり、弱めたりする要因となるものである」
「時間」といえば、1秒・1分・1時間・1日・1週間・1ヶ月・・・といった単位ならば思い浮かぶこともありますが、1秒といってみたところで時間をどのように説明できるのでしょうか。
説明はさらに続いて、
「瞬き1回を1マトラ(一瞬)という単位に数え、15回瞬きをした時間をカーシュタ、さらに60回カーシュタをナーディタと呼ぶ。」
このように12種類の時間の単位が紹介されています。
瞬きから紹介される時間の単位は(途中を省きますが)さらに続きます。
「昼と夜が15回繰り返すと1パクシャ(2週間)という。2パクシャが1マーシャ(1ヶ月)となり、連続する2マーシャを1つと数えて6ルトゥ(6季節)と数える。」
こうして、アーユルヴェーダの古典やインドでいうところの「季節」というものが、どれくらいの長さなのか述べられます。
その6季節、さらに2つ(アーヤナ)に分かれます。
「2アーヤナを1ワルシャ(1年)」として時間は12単位あり、1番長い単位を1年と語られます。
1月中旬から始まる1年の前半3シーズンは、冬(シシーラ)、春(ワサンタ)と夏(グリシュマ)、後半3シーズンは、雨季(ワルシャワ)秋(シャラダ)、初冬(ヘーマンタ)です。
前半3シーズンは、ウッタラーヤナ(太陽が北を移動している時)、別名アダーナカーラ(体力を奪われる時期)と呼ばれます。
ウッタラーヤナは、1月中旬から7月中旬までですが、つまり、
「暑い、熱が強い時期。太陽光線がとても強く、丸い円盤が輪っかで囲まれ、とても暑い熱を放つ。太陽の暑い光線に触れると空気は、熱く、乾燥し、地上のすべての湿気と冷気を奪い取り、乾燥のもとになる。そのために、苦味、渋味、辛味がより優位となり、体力を弱める。」
とあります。
さらに、後半3シーズンをダクシナーヤナ(太陽が南を移動する時期)、別名ヴィサルガカーラ。
「ヴィサルガカーラは、穏やかで、ひんやりする時期。この季節には、空は、雲や風、雨でおおわれている。太陽は、南に向って移動し、月の影響が大きい。そのため、涼しく、すごしやすい気候である。冷たい雨が降るので、酸味、塩味、甘味が生じる。酸味<塩味<甘味の順にますます体力をつける。」
と紹介されます。
そして、
「体力的に最も強い時期が初冬(へーマンタ)と冬(シシーラ)。中程度の時期が秋(シャラダ)と春(ワサンタ)、最も弱い時期が雨期(ワルシャ)と前半3シーズンと後半3シーズンの移り変わりの時期」
と述べています。
このように、まず、季節とはなにか?それは何の影響で、どのように体力に影響するのか、と紹介するところから季節の章が始まっているのです。
このあと、具体的に各季節の特徴と体力を維持する過ごし方のコツなどが挙げられます。
それも、インドの季節を知らない人に紹介するためにもぴったりな表現で、具体的なたとえが並びます。
たとえば、春(ワサンタルトゥ)。
岡山県出身の私からするととても暑くインドの春といわれても、大いに夏の気配を感じるのですが、こちらの春(ワサンタ)とは、いったいどのような季節でしょうか。
「春(ワサンタ)には、南風が吹く。太陽光線が銅のように赤みを帯び、木は新鮮な芽、幹、葉でいっぱいになる。四方は、すっきりと晴れ渡り、木は、アショーカなどが森を飾る。鶏や、蜂たちのここちよい鳴き声が響き渡っている。人体のカパ(粘液質)が冬に溜まっていたのが暑い太陽光線の影響でさらに増して、消化器系を弱めるため多くの病気のもととなる。」
こういう特徴をもつのが春(ワサンタ)なのです。
たしかに、鳥の鳴き声がいつにもましてよくきこえます。
アショーカの木は、見慣れないので今一つピンときませんが、常緑樹も多い中、葉を落とし、裸になっていた木々にも、よく見ると新しい芽がでています。
プーネ市は、インドでもワースト5に入るほど大気汚染のひどい街ですが、それでもこの時期は、雲一つない空といえるでしょう。
言われてみれば、私がこの時期いつも食欲がなくなり、夏バテのようになるのは、消化器系が弱くなっているせいかもしれません。
ちなみに、日本では、春先に花粉症に困られる方が増えるのも、カパによる消化器が弱ることに関わっているといえます。
では、その対策は何かというと、
「催吐療法、吸入、うがい、点鼻薬、運動、マッサージ、はちみつ、大麦、小麦、砂漠のように乾燥した土地にすむ動物の肉などを食べること。日中は、入浴後、白檀などの香りをまとい、素敵なドレスで着飾っている美しい女性や友人たちと庭で過ごすこと。新鮮なマンゴージュースや新鮮な薬用酒を美しい器に入れて、美しいグラスを用意すること。水は、香りのよい白檀や生姜などを入れて沸かしてから飲むこと。昼寝や脂っこいものや酸味、甘味は控えること」
とあります。
ただし、「健康な人は、毎日六味(甘、塩、酸、辛、苦、渋)をすべてとりいれた食事をした上で、各季節にあった味を考慮すること」が原則です。
また、章のはじめに、
「季節は地水火風空の5要素(マハーブータ)が変容することによって、全生物の誕生と死を生じるもととなり、各季節の長所、短所を生み、すべての物質の味や効能の原因となり、体やドーシャ(体の構成)の強さを引き出したり、弱めたりする要因となるものである」
アーユルヴェーダの基本的概念にでてくる5要素(マハーブータ)は、宇宙全体を大宇宙とすると、人類は小宇宙で、すべては同じ5要素に由来するといわれます。
食べ物や行動、季節の影響などによって「地水火風空」のバランスに特徴がでてきます。
食べ物の味も、そのバランスの違いによって生じたものであり、指標となります。
つまり、各季節に増えている5要素である地水火風空のバランスを考慮した上で、食事や行動に気をつけることが、ひいてはドーシャ(体の構成要素)を整え、病気の予防につながるというわけです(地水火風空が何かということについては、別の章でくわしく述べられています、それはまた別の機会にお話します)。
最後に、この章には、もう一つ大事なことが述べられています。
それは「季節の変わり目の過ごし方」です。
各6シーズンのはじめと終わりの7日間ずつ、つまり14日間を「季節の変わり目(ルトゥサンディ=2つのシーズンの繋ぎ目)」といいます。
「シーズン終わりの7日間は、少しずつその季節の習慣を減らしていって、次に始まる季節の習慣を徐々に取り入れること。万が一、突然やめたり、始めたりするようなことがあれば、慣れない食事や行動のせいで病気を引き起こすだろう」
とあります。
もちろん、病気の人は、例外です。
病気のための指針に沿うことが大切ですし、健康な人であっても体力の程度にあわせて従うよう、注意がなされています。
インドの春と日本の春は、暑さが違う!と思っていたのですが、広いインドでも北のヒマラヤの方はまだまだ長袖を着るほど寒いようです。
インドの春(ワサンタ)は、5月中旬までで、そのころマンゴーの旬=夏を迎えます。
ヒマラヤの氷が融けて川の水が増えるように、体の中の粘液質と呼ばれるカパが増えるのだと教わったことが印象に残っています。
なるほど、冬の間に積もった雪が氷のうちはいいけれど、融けて川の水量を増すのは、まるで鼻が詰まっている時に暖かい部屋にいくと鼻水が出て困るときのようかもしれません。
冬にどれだけカパをためこまない過ごし方をしているかによって、たとえば、花粉症の程度も変わってきます。
日本では、新学期も始まった頃でしょうか。
季節に限らず、職場や学校といった慣れない環境やストレスにおススメをひとつ。
皆さんの毎日が楽しい一日になりますように。
(笑いの瞑想~OSHO)
毎朝、目覚めるとき、目を開く前に猫のように体を伸ばしましょう。
体のあらゆる筋を伸ばします。
3~4分ほど体を伸ばした後、目を閉じたまま笑いはじめましょう。
5分間、ただ笑います。
最初はわざとらしくやっているという感じがあるかもしれません。
けれどもまもなく自然な笑いを誘いだすでしょう。
我を忘れて笑いましょう。
自然な笑いになるまでに数日かかるかもしれません。
それは、日頃から慣れていないからです。
しかし、そのうち、自然な笑いになるでしょう。
そうなれば、その笑いが1日をまるですっかり変えてしまいます。
(OSHO MEDITATION - THE FIRST AND LAST FREEDOM より。)
インド・プネのワゴリ・アーユルヴェーダ大学より。
大橋美和子
ワゴリアーユルヴェーダ大学のホームページはこちら。
http://www.atharva-ayurved.com/trust-activities/ayurved_college.html
パンチャカルマの情報はこちら。
http://www.atharva-ayurved.com/trust-activities/panchakarma/treatment.html
様々な瞑想&セラピーが体験できるプネ・OSHOメディテーションリゾートのホームページはこちら
http://www.osho.com/