こんにちは、ジヴァ・ジャパン アーユルヴェーダを主宰している文分です。
アーユルヴェーダライフさんとは長いお付き合いでありながら、なぜかアーユルヴェーダ記事を投稿するタイミングを逸しておりました。
今回初めて記事を書かせていただきました。
今回取り上げたテーマは「ピッタ」です。
冬なんだからヴァータについて書くべきだという声が聞こえそうです(笑)
なぜピッタを取り上げたかというと、ピッタ(火)は人生の変容をもたらすドーシャだからです。
最も古いヴェーダ聖典の一つである「リグ・ヴェーダ」に登場する神々は、自然界の物や自然現象を神格化した自然神です。
なかでも火の神様である「火神アグニ」が強く崇められました。
アグニは「神の口」を意味するので、奉納されたものは火の中へ投じられ、デーヴァ(神々)に捧げられました。
いまでも奉納物を火に投じる「ホーマ」の儀式が残っています。
ホーマの儀式が日本に渡ってきて護摩になりました。
ヴェーダ哲学者であるDr. サッティヤナラヤナ・ダーサ(ババジ)が日本に来たとき、川崎大師にお連れしました。
護摩焚きを見たババジは僧侶のそばまで行き、「インドと同じだ!」と言ってその場を離れようとしませんでした。
普通なら「近づかないで」と注意されていたでしょうが、何も言われなかったのは長髪インド人の特権だったのでしょう。
アグニは、火神の名前から火を意味する言葉になり、消化の火を意味するようにもなりました。
(不可逆性の変化を促す火)
アーユルヴェーダを含むヴェーダの宇宙論では、この宇宙は空(くう)、空気(風)、火、水、地の五大元素から構成されていると考えられています。
火の元素は、事物をある形から別の形へ変換する役割を担っています。
宇宙におけるあらゆる変換は火によってもたらされます。
たとえば、火を使う調理は生の食品を柔らかく消化しやすい形に変え、果物は光合成による熱で成熟します。
火を意味するサンスクリット語は「アグニ」ですが、消化の火の意味だけでなく、私たちの存在の深部にある何かを熱望する「炎」のことをも意味しています。
アーユルヴェーダでは、「火」は3つの身体エネルギーの1つである「ピッタ」として表わされています。
ピッタは、熱い、鋭い、貫く、軽い、酸っぱい、辛い、油性・液性といった性質を持ち、体内では消化・代謝・エネルギー生成を司ります。
体内のアグニが弱まると消化力が低下し、様々な病気の原因となります。
だからアーユルヴェーダでは、アグニを改善すれば、精神的な病気を含めてすべての病気を改善できると考えます(実際の治療はそれだけではありませんが)。
アーユルヴェーダは、体の病気はすべて胃から始まると考えます。
胃の下半分と小腸にあるアグニが弱まったときに病気が始まると考えます。
これは妥当な考え方だろうと思います。
なぜなら、動物は一本の消化管から始まったからです。
脳や手や足はあとから発生したものです。
動物の生命の根源は消化、つまり「アグニ」にあるのです。
人間の生命は体、心、感覚器官、魂から成り立っています。
このどれもが健康であるためには、生命の根源であるアグニ、つまりピッタが健康でなければいけません。
(上昇志向が強いピッタ)
ピッタが多い人は代謝がよく、体温は普通よりやや高い傾向にあります。
また食欲と共に、心のレベルでも何かを求める気持ちが強く、食べ物の消化力と同じように、物事の理解も早いといった特徴があります。
学び、理解したいという欲求が強いのです。
ピッタには周りを明るく照らす性質があり、上昇する性質があります。
ヴァータつまり風の動きは、まさに風まかせで四方八方に動きます。
これに対して、火は上に向かって動きます。
ローソクを下に向けても斜めに傾けても、炎は上に向かいます。
だからピッタが多い人は上昇志向が強いのです。
エネルギッシュなピッタは、物事をより良い方向へ変化させる性質を持っています。
(スピリチュアリティーの前進)
古代のヴェーダの賢者は、スピリチュアリティーの前進こそ人間の人生における最大の変容であると考えていました。
スピリチュアリティーとは、物質への執着から自らを解き放つプロセスであり、ピッタの性質を最もよく活用したプロセスと言うことができます。
だからこそヴェーダ文化は火を非常に重視し、あらゆる儀式で火を崇拝したのです。
私たちの心は常に五感を通じて知覚情報を得ています。
摂取された食べ物が胃腸で消化されるように、情報も消化する必要があります。
心の食べ物はブッティ(知性)によって消化されます。
ブッティは火、つまりピッタが優勢な機能です。
ピッタ体質の人は消化能力が強いため、大量の知識を消化することができます。
しかしピッタのバランスが崩れたり弱くなったりすると、取り込んだ情報を消化しきれなくなります。
すると心のアーマ(毒素)ができます。
心のバランスが崩れる要因になります。
ピッタのバランスがとれているときは、集中力があり物事を正しく理解することができます。
しかしピッタが乱れると、スピリチュアリティーの向上に欠かせない集中と理解が困難になります。
さらにピッタが過剰に増大すると忍耐力がなくなり、早急な結果を求めがちになります。
これが高じて、いらつき、怒り、妬み、嫉妬という感情が起こります。
ピッタのバランスが崩れると独断的、反抗的になり、良好な人間関係に支障をきたすこともあります。
心と体が不健康であれば、スピリチュアルな行いはできません。
ピッタのバランスを保つことはスピリチュアリティーの前進に欠かせない要素なのです。
意識は「心臓部」にあるとアーユルヴェーダは考えています。
心臓はサーダカ・ピッタの場所です。
サーダカ・ピッタはピッタのサブドーシャです。
サーダカ・ピッタのバランスをとることによって、意識がクリアになり、ブッティ(知性)もより高いレベルに上昇します。
(ピッタのバランスをとる方法)
どうしたらピッタのバランスをとることができるでしょうか。
●サトヴィックな食べ物・・・新鮮な野菜・果物、穀物、はちみつ、水、ナッツを十分に食べましょう。
サーダカ・ピッタを含むピッタを鎮めます。
辛いもの、酸っぱいもの、塩辛いもの、脂っこいものはピッタを増悪させます。
加工食品・ジャンクフードも可能なかぎり控えましょう、アグニを弱めるからです。
アグニが弱い人はショウガ、フェンネル、トリカトゥ、クミン、コリアンダー等、スパイスを料理に活用しましょう。
●プラーナヤーマ・瞑想・・・ピッタが優勢な人は怒りっぽく、また支配欲が強い傾向にあります。
適切な食事に加えて、プラーナヤーマ(呼吸法)と瞑想を行うことも大切です。
ピッタ体質の人は知識と知恵を好むものの、煽られるとやり返そうとします。
そうした感情はピッタのバランスを崩します。
人を許すことも人生の変容には必要です。
ピッタをうまくコントロールできないと、ピッタ本来の攻撃的な性質が高血圧、ストレス、不安などを引き起こします。
●自然のなかを歩く・・・これも大事。
増悪したピッタを鎮め、心を落ち着かせる効果はバツグンです。
●早く寝る・・・理想的には10時まで、それがムリなら11時までには就寝しましょう。
夜10時から午前2時まではピッタが優勢な時間帯なので、12時以後まで起きていると、ピッタのバランスを崩します。
●便秘を防ぐ・・・毎朝決まった時間に出るのがあるべき状態です。
●毎日セルフオイルマッサージをする・・・ドーシャのバランスを整え、心も落ち着かせます。
●ポジティブでサトヴィックな人と集う・・・人間関係はドーシャバランスと心に直接影響します。
人生の変容に大切です。
アーユルヴェーダは「肉体は必ず朽ちるけれども、魂は決して消滅することはない」と言います。
魂が連綿と続いているのは、スピリチュアルな自己を高めるためだと考えています。
ドーシャと呼ばれる生理的エネルギーをみるとき、どうしてもヴァータに注意が向きます。
ヴァータは「ドーシャの王」ですし、現代人は誰でもヴァータを乱しているからです。
しかし同時に、人生をより高いところに変容させるためには、ピッタにも注目する必要があります。
人生の変容をもたらすピッタのコントロールも欠かせないのです。
【コラム筆者】
ジヴァ・ジャパン アーユルヴェーダ 文分千恵さん
(ジヴァ・ジャパン アーユルヴェーダ)
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