こんにちは。
アーユルヴェーダ料理研究家の三浦麻貴です。
今日は、アーユルヴェーダの古典書に書かれている「慣れ」についてお話します。
チャラカ・サンヒター 総論第6章49節「定期的な使用によって、それが健康に良いものになることをオーカ・サートミヤ(習慣により特定の食べ物や行動に順応すること)という。」
あなたは、今どこにお住まいですか?
出身地はどこでしょうか?
これまでにお引越ししたことはありますか?
唐突な質問のようですが、実はこれがアーユルヴェーダ的にとっても重要なのです。
春、大学生や社会人になって、生まれ育った土地から離れ、別の地域に引っ越して、新しい生活をはじめる人も多いのではないでしょうか?
新天地での生活にわくわく、どきどき。明日からの新しい生活が楽しみですね。
ところが、引っ越し先で、風邪を引きやすくなったり、じんましんが出たりと、体調不良を感じる。これはよくあることのようです。
私もこれまで4回引っ越しをしています。
一番大きな引っ越しは、生まれ育った大阪から、23歳で結婚を機に東京に引っ越したことです。
あの頃は、新しい生活に慣れようと一生懸命で、何年か体調不良を感じながらも、必死で頑張っていました。
アーユルヴェーダを勉強した今は、あの頃の私に、もっとゆっくりでいいんだよ、慣れないのが当たり前なんだよ、と声をかけたあげたいくらいです。
今思えば「水が合わない」ことによる体調不良だったのかもしれませんが、その体調不良も何年かすると、自然となくなっていました。
おそらく、この体調不良の時に病院に行ったとしても、何か病名がつくわけでもなく、「疲れですね、ゆっくり休んでください。」となっていたでしょう。
大阪と東京は距離にして約400㎞、飛行機の移動で1時間弱、新幹線だと2時間半。
徒歩だと一日6~8時間歩くとして、15~20日間ほどかかるそうです。
気温差はそれほどありませんが、東京は降雨量が多く、また雪が降った時に積もることが多いようです。
東京に来て、違和感を感じたのは景色でしょうか。
大阪も都会ですが、遠くに山が見え、実家の大阪には近くに川があったので、水を感じることができました。
そして、なんといっても食べ物の違いにはなかなか慣れませんでした。
今でこそ、東京にも、大阪や四国のうどん屋さんが出店しているので、うどんのつゆの色が薄いですが、引っ越してきた頃は、うどんのつゆが真っ黒で、醤油の味しかしなくて食べられたものではありませんでした。
そして、大阪では普通に売っていたお野菜やお魚で、東京では見かけないものもいくつかありました。
もちろん築地に行けば売っているのでしょうが、小売店では見かけません。
今でも、見かけないのは、鯛の子です。
春になると、鯛の子とフキやグリーンピースなど、春の青物と炊き合わせたものが食卓に出ていました。
こうして思い出すととても懐かしいです。
日本は狭いといっても、南北に長く、地域の特徴は都道府県で違いますよね。
気温や気候が違って、そしてその土地でとれる作物の違いもあります。
東京と大阪でもこんなに違いを感じるのですから、もっと遠くに引っ越したことのある人にとっては、かなりの違和感でしょう。
でも何年か住んでいると、その違和感が薄れてきて、慣れない景色、慣れない言葉、慣れない食べ物、に慣れていきます。
こんな風に、最初は体調を壊すほどの環境にも、そこに住み続けることにより、拒否反応がなくなります。
このような後天的な慣れのことを、アーユルヴェーダではオーカ・サートミヤといいます。
また、オーカ・サートミヤというのに対し、伝統的に慣れていることをサートミヤといい、アーユルヴェーダでは、これを大切に考えています。
アーユルヴェーダの基本ルールでは、健康に良くない食べ物や食べ方も、ある民族では、伝統的に食べられていて、悪い影響を及ぼしていないものがあります。
たとえば、日本人にはおなじみの発酵食品。
私もお味噌汁は大好きで、先日、初めてお会いした若い女性に、料理の仕事をしていると話したら、「一番得意な勝負料理はなんですか?」と聞かれ、思わず「お味噌汁」と答えてしまいました。
もっと、おしゃれな手の込んだ料理の答えを、期待されていたのかもしれませんね。
お味噌やお醤油、お漬物など、日本には発酵食品がたくさんあります。
アーユルヴェーダでは、発酵したものをあまりすすめていませんが、日本人にとってこれら発酵食品はなくてはならないものです。
日本で生まれて日本で育っている人が、毎日お味噌汁を飲んで、体調を崩す・・・なんて聞いたことがありません。
でも、外国から日本にやってきて、お味噌汁を毎日飲んでいて体調を崩す人はいるかもしれません。
伝統的に慣れている食べ物や食べ方が、その民族の健康を長年にわたって支えています。
日本は先進国の中でも、食文化が発展している国で、ある意味少し特殊かもしれません。
普通の人が普通に、普通の値段で、いろんな国の料理が食べられます。
家庭の主婦がいろんな国の料理を作ることができる。
器用で、素直で、順応性があると思いませんか?
しかも様々な食材や調味料も手に入るのです。
でも、忘れてはいけません。
私たちの体は、何百年も前から先祖が食べてきたものからできています。
慣れている日本の食事から、かけ離れた食事をし続けていると、体や心のバランスを崩しやすくなり、体調も整えにくくなるでしょう。
食は命そのものです。
口からとりいれたもので、自分の体や心が作られます。
日本人が伝統的に食べているものや伝統的な食べ方がアーユルヴェーダの料理のヒントになります。
本当に慣れているものはなんなのか、自分の生まれ育った地域のこと、環境のことをじっくりと調べ、そして、今暮らしている環境との相違を考えてみるのも健康的な暮らし方の助けになるかもしれませんね。
このように、アーユルヴェーダの食に関する知識を、アーユルヴェーダを学んでいる人にもそうでない人にも、わかりやすく伝える活動を「アーユルごはん」でしています。
また困った症状を緩和するための食事についても「食事の処方箋」という講座でお伝えしています。
アーユルヴェーダの食や、栄養学、食事学に興味をもたれたら、料理教室や講座を開催していますので、ぜひご参加ください。
【コラム筆者】
三浦麻貴(みうらまき)
(三浦麻貴さんのプロフィール)
アーユルヴェーダ料理研究家
アーユルヴェーダ・ヘルスコーディネーター(日本アーユルヴェーダスクール認定)
栄養士
ヨーガ療法学会認定ヨーガ療法士
「アーユルごはんanna」主宰
大阪出身。
料理上手の母親の影響で、幼いころより料理に興味を持ち、大学の食物学科で栄養士の免許を取得。
出産を機に、家庭での毎日の食事の重要性を再認識し、健康な心と体を育む毎日のごはんに子育ての重点をおく。
2012年より日本アーユルヴェーダスクールにて、本格的にアーユルヴェーダを学び、現代の家族をつなぐ食卓の献立を「アーユルごはん」で研究している。
また、1998年に子どもの幼稚園での講座でヨーガに出会い、心身の調和の重要性と、ヨーガの必要性を実感し、2006年2月よりヨーガの指導を始める。
2007年7月、インド料理教室「ペイズリー」インストラクター資格取得と同時に教室講師になり、8年間メイン講師として勤めた。
2008年より、日本ヨーガ・ニケタン代表 木村慧心氏を師事。
アーユルヴェーダを、ヨーガや料理を通して日本の現代に活かす暮らし方を提案し、アーユルヴェーダの食事学の講座や、料理教室など、全国各地で伝える。
「アーユルごはんanna」
(ブログ)
http://blog.livedoor.jp/tulsi67/
(フェイスブック)
https://www.facebook.com/ayurgohan/
(お問い合わせ先)
tulsi67maki@gmail.com
(各種講座のご案内)
【アーユルヴェーダの栄養学、薬理学の基礎の理論と実践が学べる講座】
(平日クラス・アーユルヴェーダの食事学/基礎1)
2017年6月30日・7月28日・9月1日、全て金曜日、時間:10:30~14:30。
開催場所:下北沢。
(土曜クラス・アーユルヴェーダの食事学/基礎1)
2017年7月1日・7月29日・9月2日、全て土曜日、時間:10:30~14:30。
開催場所:吉祥寺。
【アーユルヴェーダの季節の食養生法を学び、アーユルごはんを献立で作る料理教室】
「梅雨の食養生」
2017年5月20日(土)、開催場所:吉祥寺。
時間はいずれも10:30~14:30。
(アーユルごはんanna・レストランのご案内)
季節ごとにオープンする完全予約制のレストラン。
日本の気候風土に合わせた献立「アーユルごはん」を、コースでお召し上がりいただきます。
「梅雨~小満の献立」
2017年5月19日(金)12時から。
「夏~小暑の献立」
2017年7月16日(日)18時30分から。
「秋~寒露の献立」
2017年10月13日(金)12時から。
「初冬~冬至の献立」
2017年12月17日(日)18時30分から。
場所:吉祥寺「月波珈琲店」
https://www.facebook.com/kichijojitsukinami/
※講座やレストランの詳細は、ブログをご覧ください。