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インド・プネにあるワゴリ・アーユルヴェーダ大学に留学中の大橋美和子さんより、現地のアーユルヴェーダ事情や生活の様子についてご紹介くださいます。
(大橋美和子さん)
薬剤師。2009年からインド・プネのワゴリ・アーユルヴェーダ大学に留学中。
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(インドのアーユルヴェーダライフ・第1回|「メディテーション」は、「メディケーション」)
デカン高原に位置する高原都市プネの9月は、モンスーン。
サーサーと涼しい雨が降る季節です。
ここ数日は特に涼しさが増して、やや厚めのカーディガンがかかせません。
私の毎日のインド生活は、プネにある、
・ワゴリのアーユルヴェーダ大学(※1)でのB.A.M.S(※2)の学位取得コース。
※1 サダナンダ・P・サラデシュムク先生が理事長。
※2 アーユルヴェーダ医学&手術。
・O.I.M.R.(※3)でのアクティブメディテーション。
※3 OSHO・インターナショナル・メディテーション・リゾート。
・Puranav Clinic(ヴァサント・ラッド医師)のアーユルヴェーダ臨床実習。
にあります。
(インド・プネにあるアーユルヴェーダ病院からの風景)
私の理想的な1日の始まりはなんといっても、家から徒歩10分、O.I.M.R.でのアクティブメディテーションから。
早朝6時~7時、「OSHO ダイナミックメディテーション」という音楽を使って体を動かす技法をとりいれた瞑想でリラックスします。
O.I.M.R.には、世界各国から瞑想を求めて訪れる人たちが多くて驚かされました。
仕事や日常に忙しくすごす人々に国境はなく、癒しを求めて休暇に訪れます。
日本人は最近少なく、特にロシア、中国から来られる人が増えたようです。
弓道、ジャグジー、ダンス、ヨガ、太極拳、オーラソーマ、マッサージなどの教室やセラピーも用意されています。
朝6時から夜中まで、ほぼ毎時間おきに、スーフィーや禅、タントラ、といったいろいろな瞑想の伝統的な技法を忙しい日常にとりいれられるような瞑想テクニックが紹介されています。
ここは私にとってインド生活のオアシス、もとい、人生のオアシスです。
インドに来て何年たっても驚くほどのカルチャーショックに戸惑う毎日です。
言葉や文化の違いなど、ストレスはかなり多くあります。
いくらアーユルヴェーダが好きとはいえど、インド人にはなれません。
インドの大学生活は、日本の経験や文化ではわからない違いがたくさんあります。
それに知りたいのは、インドでなくても使えるアーユルヴェーダです。
インドの薬草、インドのオイル、インドの食事、そのものを日本や海外で使うのは大変です。
アーユルヴェーダとは、直訳すると「生命の科学」ひいては「いのちの学問」といわれます。
いのち、って何でしょうか?
イライラしたりうれしかったり、いろいろありますが、アーユルヴェーダでもすすめられるように朝一番の明け方に瞑想すると、すっきりと1日が始まります。
インド生活でのストレスも解消されます。
初めて今の大学の師であるサダナンダ・サラデシュムク先生に出会った14年前、脈診時に「処方」された、毎日15分間の瞑想というのがありました。
O.I.M.R.で瞑想と薬という単語の語源が一緒だときいて腑に落ちました。
「メディテーション(瞑想)」は「メディケーション(薬)」と同じ語源です。
治療するべきなのは、症状ではなく「いのちある人間」だといいます。
症状を一時的に治療しても根本的な原因はおさまりません。
単に症状に対処するのではなく、人としての「いのち」そのものを知る必要があります。
なぜ偏頭痛が起きるのか、どんな心労がそのような偏頭痛を起こしているのでしょうか。
「病は気から」ともいわれるように、人としてのいのちを配慮した治療が必要です。
こころと体はひとつであることを思い出すこと。
アーユルヴェーダは「いのちの科学」。
当時は、日本で薬学を学ぶ4年生だった私。
医療職として瞑想をすすめられるというのは初耳だったし、想像もできませんでした。
アーユルヴェーダに出会って、初めて瞑想が医療で重要な役割を果たしている事を知りました。
アーユルヴェーダ大学2年生の科目にも公衆衛生学があります。
環境衛生や伝染病を学ぶ科目ですが、免疫力維持や健康法を目的として、ヨガ、呼吸法、瞑想法を学びますが、あくまで基本です。
しかも数千年前の方法です。
現代に生きる私たちは、体を動かすよりも座って考える時間の方が多いでしょう。
もっと頭に抱える悩みや体にためたストレスを解消する方法が役に立ってきます。
学生は皆、放課後、アーユルヴェーダのクリニックで臨床実習をうけます。
そうでなければ、本のままの知識は役に立たないのです。
アーユルヴェーダの古典は5000年前から残されています。
基本は変わっていませんが、古典によって異なる意見もあります。
時代の変化のなかで、伝わっているアーユルヴェーダの歴史は長いです。
毎晩通っているヴァサント・ラッド先生のクリニックでも、先生の師から伝えられたと現代のための呼吸法、瞑想法を紹介されます。
肺の奥底にたまった空気をしっかり吐き出すように吐く息に重点をおいた手法です。
肺胞の空気が交換されずにたまっていると、感情もたまり、すっきりしません。
しっかりと息をはきだすことによって、新鮮な空気を取り入れる事ができます。
だから心身ともにリラックスし、ほんの10分でもマラソンに値するほどの運動になるのです。
アーユルヴェーダ大学で手技や専門知識を学びますが、ただ部分的な対処に用いるのではなく、いのちそのものを知り、治療することでメディケーション(薬)になります。
いのちである、からだやこころの声に耳を傾けることが、アーユルヴェーダを実践する第一歩だと感じています。
ここ最近、暗いところでちいさな字を読むとき少し、目がかすむような気がして、ヴァサント ラッド先生に相談したところ、ビタミンAを含む食品や眼の運動とともに「ジョティール・トラータカ」という伝統的なアーユルヴェーダの瞑想法をすすめられました。
とても簡単で、ほんの5分~10分ですみます。
就寝前に実践しています。
- ジョティール・トラータカ -
(用意するもの)
・ギー(無塩バターから作られるオイル)
・綿(天然の綿100%のもの)
・ガラスの小鉢
・マッチ
・机または台(目線の高さに小鉢をおけるもの)
ギーランプの準備:綿をこよりにして、ろうそくの芯にします。(あまり太すぎないようにしましょう)
こよりの芯を小鉢のなかに入れて、ギーを注ぎます。
芯の先にギーを少し付けてマッチで点火します。(化繊の綿の場合、すぐに火が消えてしまうので注意してください)
(方法)
目線の高さに位置する台にギーランプをおきます。
部屋の灯りを消して、眼から片腕分はなれたところに座ります。
眼鏡、又はコンタクトレンズを外してから行います。
まばたきしないで炎を見つめます。
涙がでてくるまで瞬きしないでただ炎をみています。
大橋美和子(インド・プネ)