アメリカではかなり前から「オーガニックギー」が普通にナチュラル系スーパーマケットに並んでいましたが、最近日本では成城石井でもこの「ギー」が売られるようになり、だいぶ市民権を得てきました。
でもギーって本当は何か、どんな効果があるか知っていますか?
現代のギーはバターから作られるのですが、バターにはミネラル、カルシウム、水分などの成分が含まれています。
熱いフライパンにのせた時に、アワアワ~となるのがそれです。
ギーは、そのアワアワ~な不純物を濾し、純粋な油分だけにしたものなのです。
油分だけにすると何がいいのか。
それは、腸内からの吸収力が抜群に違うのです。
細胞間にすっと浸透していき、血液に混ざって運ばれ、体の内側をデトックスしながら、潤いをもたらしてくれる優れものなのです。
不純物が入っていると、それを消化するために身体は頑張らなくてはいけないのですが、その負担がないので、本来の力を発揮することができます。
2,500年前に書かれたと言われているアーユルヴェーダの大教典「チャラクサムヒタ」にはこう書かれています。
「牛の乳で作られたギーは、記憶力を向上し、知性を高め、消化力、精子、オージャス、カファと良質の脂肪を作る力となる。ヴァータとピッタを抑え、解毒、狂気、消耗、熱を取り除く最高の油分である」
(チャラクサムヒタ27章232節)
2,500年前から狂気があったんですね~という驚きはさておき、チャラク先生が言っている「ヴァータとピッタを抑え」とは、私たちの病気のほとんどはヴァータとピッタの悪化によるもの、と言われています。
その元凶を静めてバランスを整えてくれるのです。
忙しい、寒い、乾燥している、パサパサの食事が多い、などの環境が重なると、ヴァータが悪化して腸内が乾燥して便秘気味になります。
これを「ヴァータが溜まっている」と表現するのですが、ギーのピュアな油分がその過剰なヴァータを押し流してしまいます。
ギーには軽い下剤効果のようなものがあるので、腸内を潤すだけではなく、乾燥して固まった腸内老廃物質を柔らかくして壊し、膨満感や便秘を解消してくれるのです。
これは、ギーに含まれる短鎖脂肪酸のなす役目が大きいでしょう。
短鎖脂肪酸は腸内環境弱酸性に整えて有害な菌の繁殖を抑え、腸内煽動運動を活性化します。
つまりは、ギー消化力が落ちて悪化した腸内環境を助けてくれるのですね。
さらに、脂肪になりにくくエネルギーになりやすい中鎖脂肪酸と、脂肪を分解して燃焼させる共益リノール酸が多く含まれています。
そして若干の冷性と甘みによって、ピッタをあげることなく消化力を改善してくれます。
体内のアーマ(毒素)を排毒して免疫力を高めて、細胞の隅々まで届いて体内組織(タートゥ)の代謝を促し、血液とリンパを整えて体力を作ります。
さらにギーはココナッツオイルと同様、煙点が250℃と高いので、料理で熱しても酸化しにくく、活性酸素をつくりません。
そして抗酸化作用があるビタミンAとEを豊富に含んでいます。
その結果、細胞が活性化されて、老け知らず。
アンチエイジングにいいと言われる所以はここです。
ただし!油分は油分。
コレステロール値が気になる方やカファ体質で体重が増えやすい方は摂りすぎにご注意ください。
このギーですが、いいのは血液と腸内だけではありません。
チャラク先生の本には「オージャスを作る」と書かれています。
オージャスとは生命力、精気のような内側から輝くオーラのようなことを言いますが、これを強くするとはすなわち、女性にも男性にも子作りにもよいのです。
ギーは免疫力の決め手となる体の中のカファの質を高め、母乳や精子を増やすと言われています。
7段階あるダートゥの最終段階、生殖器にすーっと届いていくのですね。
元気にしてくれる、ということはすなわち私たちの人類全体としての生命力に関わることなんです。
実際、インドでも妊婦さんにこのギーは推奨されていて、妊娠時になりやすい便秘を助け、赤ちゃんの体を作るための栄養補給になってくれます。
そしてリンパなどを掃除するので、体を柔らかくしてお産を助けてくれるのです。
特に妊婦さんなどは、ご飯を炊く時にギーをスプーン一杯入れて炊くなどして、積極的に摂取してみてはどうでしょうか。
そしてギーのもう一つの大切なエッセンスは「サトヴィック」であるということです。
サトヴィックとは端的に言うとエネルギーがピュアで高い状態のことを言いますが、ギーや最もサトヴィックな食べ物のひとつ、とされています。
ギーの甘い芳香とサトヴィックなエネルギーが、私たちの心にバランスと静けさ、平和、魂の成長と意識の拡大をもたらしてくれるそうです。
毒素が詰まっているからこそ神経が詰まって伝達がうまくいかなくなりますが、ギーはそれを掃除してくれるので、脳神経が綺麗になって記憶力が向上し、知性が高まる、ということです。
インドの寺院ではこのギーを神様に捧げたり、ギーでお身体を洗ったりします。
そして参拝後にはプラサードと言ってお供えをいただくのですが、大抵南インドではパイヤッサムと言って、このギーを使って甘く煮込んだおしるこのようなものをいただいて帰ります。
神様に捧げられたサトヴィックなものをいただいて、私たちも日々サトヴィックに過ごしましょう、ということですね。
このミラクルでパワーフードなギーですが、昔は今のようにバターを溶かして作るのではなく、牛乳を撹拌して長い時間をかけて作られていました。
その際は、上弦の月もしくは満月に作ると、月のエネルギーを吸収してさらにパワーアップしたそうです。
さらに皆でマントラをお唱えしながら作っていたそうです。
だから私たちも、せめてこの時期に作るとよりいいかもしれません。
そのようにして作られたギーは保存状態が良ければ、半永久保存可能と言われます。
百年も経ったギーがまだ食べられる状態発見されたこともあったそうです。
そしてネパールの大震災の時は、瓦礫の下に埋もれた男性が、たまたま近くにあったギーを舐めて1週間生き延びた、というニュースもありました。
このように素晴らしいパワーを備えているギーですが、もちろん元となる牛乳、そしてその牛の質も重要です。
自分で作る際は、できるだけ自然な状態で育てられた牛から採れた質のいい牛乳から作られたバターを使うことをオススメします。
ギーの作り方はこちらのコラムを参照してください。
http://www.ayurvedalife.jp/about_ghee.aspx
ギーを漉す時は、このようにキッチンペーパーを何枚も重ねて濾してもいですし、コーヒーフィルターを使ってもいいでしょう。
湯煎した瓶に入れてしっかり蓋をし、使う時は綺麗なスプーンなどを使って水などが入らないようにしてください。
ではそのギーの使い方をいくつかご紹介します。
1. 眠れない時、途中で目が覚めてしまう時はヴァータやピッタが乱れている時です。
寝る前に、おでこにギーを塗れば乱れが落ち着き、眠りが深まるでしょう。
2. 寝る前にギーをまぶたに塗れば、目が輝きます。
3. 毎晩唇に塗ってねれば、唇の色が明るく透明になってくるでしょう。
4. やけどをした時は、ギーを塗れば皮膚の再生が早まります。
5. 乾燥肌や炎症を起こしている肌を落ち着けます。
6. 炒め物などの料理に、他の油と同様に使うことができます。
7. 揚げ油として使えば、とっても美味しく仕上がります!
8. パンに塗ってトーストすれば、パンが持つ乾燥性のヴァータを沈静してくれます。
そしてとても美味しくなります。
チャパティを焼く時に使ってもいいでしょう。
9. 豆、穀物、でんぷん質などのヴァータによる乾燥性を特に沈静してくれるので、一緒に使えば、味や栄養はもちろん、ドーシャのバランスも整います。
10. 蒸し野菜の上(特にスイートポテト!)の上にかければ、もうそれだけで満足な一品。
最後に、このギーを使ってこの冬にぜひ試していただきたい一品はこちら。
種無しのデーツとカシューナッツを詰めて瓶に入れ、とかしたギーを入れてギーで浸してください。
1~3日ギーが浸透し、冬の乾燥を防ぎ、体力を作ってくれるとても美味しいデザートが出来上がります!
固まった周りのギーを適当にとって、ぱくりとお召し上がりください。
朝食と一緒に食べれば一日中元気。
余ったギーは料理などに普通に使えます。
ただし、1日1コがめやす。
夜のカファの時間に食べると重過ぎますからご注意。
どんなにいい食べ物も、自分の消化力に合わなかったり、食べ過ぎたりしては意味がありません。
適切な時に適量食べてアグニ(消化力)を整えてください。
アーユルヴェーダの「アーユル」の意味は「命」です。
命は心、体、感情、魂、人間関係、すべてを含みます。
食だけではなく、運動、睡眠、仕事、趣味、休息のすべてがバランス取れるようにご自身を導いてあげてください。
【コラム筆者】
水野香織(Kaori Mizuno)
(水野香織さんのプロフィール)
愛知県生まれ。
立命館大学文学部卒業。
広告代理店勤務の後、Dr. ニーマル・ラージ・ギャワリ師が運営するヨガスタジオのマネージャーを務める傍ら、ヨガティーチャートレーニング、アーユルヴェーダ ライフスタイル カウンセリングコースを修了。
その後、世界各国で一流ヨガインストラクターの通訳を務める。
南インド・ケララ州のアーユルヴェーダセンターGreens Ayurなどで習得した調理技術や知識を活かし、アーユルヴェーダ料理のクッキング教室、イベント、レクチャーなどを開催。
2015年に一年限定のアーユルヴェーダレストラン「Ayurda」をオープン。
Ayurdaでも定期的に料理教室を開いて好評を得る。
現在は料理研究家として、表参道Trueberryのメニュー監修を行い、東京と京都にてアーユルヴェーダ料理教室と連続講座を教え、アーユルヴェーダカウンセリングの食事アドバイザーとして活躍している。
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最寄り駅:表参道駅B2出口より徒歩2分。
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【2017年2月/南インドケララ州・アーユルヴェーダ本格体験 募集中】
詳しくはこちらをご覧ください。
http://ameblo.jp/roika627/entry-12213088884.html