チャンドラ・プラカシュ・ヴェルマ先生は、2005年にChhatrapati Shahu Ji Maharaj University(ウッタル・プラデーシュ州)を卒業しアーユルヴェーダ医師免許(BAMS)を取得、ウッタル・プラデーシュ州のアーユルヴェーダ・カレッジ&ホスピタルにて臨時教授として着任。
その後Vaidyaratnam グループにおいて薬学、またパンチャカルマ・トリートメントの分野を担当されるアーユルヴェーダ医師として従事されます。
さらにオープンカレッジにて知識を高めてニューデリー政府認定の栄養健康学履修を終了され、パンチャカルマ専門医師医としての実績を積み重ねて来られ、2011年からはSanthigram Kelala Ayuruvedaにて顧問医として勤務、レーザー医療技術を習得するなどアーユルヴェーダと現代医療の知識をバランスよく組み合わせながら、患者さんにとって最も有効な最善策を見出すことのできる現場重視のドクターとしてご活躍されています。
今回のインタビューは、インド・デリーのオフィスで行わせていただきました。
(インタビュアー)
はじめに、アーユルヴェーダについて、またアーユルヴェーダ医療についてお話をいただけませんか。
(ヴェルマ先生)
アーユルヴェーダとは、よく「生命の科学」と言われます。
それは私達が、どうやって自然の法則と調和しながら生きることができるかという、生き方自体の本質そのものであるということです。
アーユルヴェーダでは、どうやって健康と体力を維持していくのか、という点に重点をおきます。
例えば、健康な人にはどうやって体力や若さを保持するか、一方では病んでいる人にはどうやったらその病気を癒すことができるのかということです。
その上で、アーユルヴェーダのトリートメントの特筆すべき点は自然由来の方法によって行なわれるということ、これは治療自体に副作用がない事を意味しています。
アーユルヴェーダの哲学にはこうあります。
「人はプラクリティ(プラクルティ)、そしてドーシャと呼ばれる類稀なる構造を、生まれながれにして持っている」
この概念によると、この世の全てのものはプラクリティ(プラクルティ)という宇宙のエネルギーと呼ばれる、空間、風、火、水、土の「要素」によって作りだされるものとされ、人の身体もまた同様であるとされます。
そしてこれらの5つの「要素」は、ドーシャという身体の3つの基本的なエネルギーと直接的な関係があります。
このドーシャは「ヴァータ」「ピッタ」「カファ」に分類されますが、これらの組み合わせやのプラクリティ(プラクルティ)の在り様は、私達ひとりひとり全て異なっているものと考えられます。
つまりは、私達ひとりひとりは、その人それぞれの個性をもっているということです。
アーユルヴェーダという学問の中では、単純に「健康=病気を患っていない」という定義はありません。
健康とは体と心と意識のバランスです。
これは、3つのドーシャ(ヴァータ、ピッタ、カファ)と7つのダハトゥ(器官)がバランスよく機能していること、マラ(3つの排泄物)、アグニ(消化の火)が活発であること、心と魂のバランスが取れている状態と考えています。
どのようにしたらこれらのバランスが取れた生活を送れるのか、個人ひとり一人においてどのような状態がバランスが取れている状態なのか、そうしたことを理解することができれば、より健康に、理想の日常生活がもたらされることでしょう。
アーユルヴェーダは、このような様々な内容に応じた治療法を判断するための「基準」を設けています。
その意味でアーユルヴェーダの理論は、個々の患者さんの体質を分析したり、病気が発病する変化を理解する上で大いに役立ちます。
アーユルヴェーダの知識は、患者さん毎に個別に働きかけられるよう構成されており、理想の健康状態のために計画を立てることができます。
それは人それぞれどのような状態に対しても適応できます。
従来の「西洋医学」とは異なり、アーユルヴェーダは「誰にでもなんにでも効く特効薬」ではありません。
その代わり、それらの計画は患者さんの個々のプラクルティにあわせて調整します。
つまりその人にあった栄養・運動・衛生指導・社会的相互作用・日常生活を考慮した取り組みです。
治療は「予防」「是正」「回復」という3つ段階に応じて、適正な施術をしていきます。
それらは食事制限、栄養補給、日常生活の改善、特別メニューの運動に加え、自然の薬用ハーブを用いる治療も含まれます。
病気とは、誰しも突然発症するものではありません。
それは段階的な経緯をたどるものであり、日常生活習慣や、食習慣、感情的な出来事や社会生活や仕事からのストレスなどを通して行なわれる、不健康な習慣が起因するのがほとんどです。
病気には6段階の過程があると考えます。
1. ドーシャが乱れている状態が継続する。
2. 蓄積された乱れたドーシャが悪化する。
3. 悪化したドーシャが体の別の部分へ広がる。
4. 悪化したドーシャが器官に浸潤し堆積されていく。
5. 病気の症状が見え始め兆候が出始める。
6. 細胞の奇形がゆがみを引き起こす。
・ ・ ・ ・
アーユルヴェーダはそれだけでも、また現代医学と組み合わせても学ぶことができます。
また慢性疾患でも急性疾患でも患っている人に多くの利点があります。
アーユルヴェーダでは患者さんが来られたとき、現在の疾患だけをみるのではなく、包括的に診察していきます。
アーユルヴェーダは高水準のアーユルヴェーダドクターによって作られた10ステップの検査方法があります。
非常に基本的なルールは、ドーシャに関する問診と脈診で検査を行います。
具体的に、私達がアーユルヴェーダ的施術を行なう場合、患者さんのドーシャの状態を把握するために様々な形で診察をしていきます。
例えば、ヴァータは体の器官の中で神経の動作やバランス全般を担っていますが、多発性硬化症は基本的にはヴァータの不具合によって起こる疾患です。
ヴァータの不具合は多発性硬化症が発症することに関係する様々な環境や症状に起因します。
それ以外にも不眠症、体の痛み、頭痛、便意、不安、心配ごとや悲観、倦怠感、肌荒れ、乾燥肌、食欲不振、体重が減る、過敏症など、ヴァータの乱れは様々な問題を引き起こします。
アーユルヴェーダにおける診察は、このような特定のドーシャの状態の理解から、心身全体の診察を通して、疾患の特定と症状の状態を把握していきます。
治療における、アーユルヴェーダの全てのアプローチは、古代に培われてきたものとは思えない程に、非常に高度な内容となっています。
(インタビュアー)
先生がご専門とされる診療分野において、最近の来訪患者の病状の傾向やその原因などについてお話をお聞かせ頂けますか。
(ヴェルマ先生)
アーユルヴェーダが生み出されてから数千年の間変わらないことですが、私達はその時代毎の環境の変化に適応していかなくてはなりません。
特にここ数十年においては、世界は明らかな大きな変化を遂げています。
私達の心と身体は、環境や社会の変化に随時対応し、適用しようと常に取り組んでいます。
その結果、変化に適用とようとしたことで、食生活や日常生活において偏りが生まれてしまう場面も生まれます。
そうしたことから、現代の人々は心身ともに過剰なストレスらさらされていることも多くなってきていると感じています。
またそれらの様々なストレスは、身体に影響を及ぼします。
脊椎炎や骨格筋に関する問題、胃腸の障害、偏頭痛や生殖障害など、ストレスに起因するとも思われる症状を訴える方も増えてきているように思います。
私は、一般的に疾病の治療だけてなく、個々人の疾患や背景など、それぞれにある病気の個別の原因に焦点をあててアーユルヴェーダ治療を行うようにしています。
(インタビュアー)
最後にインタビューをご覧の日本の皆さんへメッセージをお願いします。
(ヴェルマ先生)
ご存知の様に、ここ10数年においては、アーユルヴェーダやヨガは欧米諸国に非常に受け入れられています。
日本でもアーユルヴェーダの本質に気づいていくのは必然的な事かと思います。
アーユルヴェーダを日常生活を取り入れることは、日本の方々におかれても非常に有益な事だと考えます。
食生活に関して、特にインドとの違いについて良く聞かれますが、アーユルヴェーダ的な食生活とは、インド産の豆や野菜や米を食べるという意味ではありません。
基本的なアーユルヴェーダ的食生活の一番の大事な原則は、日本でも、ヨーロッパでも、新鮮な食べ物であることです。
無農薬・無添加・科学調味料ということでもありますが、季節に応じた旬のものであること、その土地の特産などである事でもありますね。
私達は、インドの伝統的なアーユルヴェーダの知識が、多くの国々の人々に受け入られて頂けることを、心から願っています。
(インタビュアー)
今日は貴重なお時間を頂いてありがとうございました。
(ヴェルマ先生)
こちらこそありがとうございました。
(取材協力)
Nomadasia
http://www.nomadasia.net/
(Santhigram Kelala Ayuruvedaについて)
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(Santhigram Kelala Ayuruvedaについて)
1998年に設立、ISO 9001:2008も取得し、ケララの伝統医療(アーユルヴェーダ)について詳細な調査・検証を行い、独自のアーユルヴェーダ治療を開発しています。
特にパンチャカルマ治療とデトックスによる現代病改善について、アーユルヴェーダ治療の有効性を提唱しています。
インド国内3箇所、アメリカ、イギリスに支部があり、所属する医師はいずれも現代医学にも理解のある国際感覚を持ったアーユルヴェーダ医師であり、日本を含め西洋社会におけるアーユルヴェーダの必要性を訴えています。
(Santhigram Kelala Ayuruveda)
http://www.ayurvedasanthigram.com/
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(Nomadasiaについて)
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Nomadasiaでは、出来るだけ多くの方々にインド本場のアーユルヴェーダを学んでいただきたいと考え、滞在費用を抑えることが可能なアットホームなホームステイ形式(ご希望によりホテル滞在も可能です)をお選びいただくことも可能です。
またこのホームステイ形式によって受講者の方はちょっとしたプチ・インド生活を体験することもできます。
コースの終了後には修了証書を発行、希望される方にはメールでのアフターサポートも行っています。
(Nomadasia)
http://www.nomadasia.net/
日本での連絡先:
東京都港区六本木4-8-7 7F、TEL 03-6864-8614(ノマダシア・田澤 宛)
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