インド・ファリダバドにメインのクリニックを置き、インド各地にもパンチャカルマセンターを持つ、ジヴァ・アーユルヴェーダ(アーユルヴェーダ医師)のパルタップ・チョハン先生にインタビューの機会をいただきました。
パルタップ・チョハン先生率いるジヴァ・アーユルヴェーダのクリニックには、インド国内外から年間約2万人もの人々が訪れ、2007年にはアーユルヴェーダの分野で目覚しい貢献をした人に贈られる「オールインディア・ダンヴァンタリ賞」を受賞され、世界的に最も精力的にアーユルヴェーダ普及活動を行っているアーユルヴェーダ臨床医のお一人でいらっしゃいます。
今回は、日本でアーユルヴェーダを学ぶ生徒さん達の研修のための渡印の機会に、インド・ファリダバドにてインタビューを行わせていただきました。
(インタビュアー)
日々、アーユルヴェーダを広める活動に精力的に取り組んでおられるパルタップ先生の、先ずはアーユルヴェーダに対する考えや想いについてお話をお聞かせいただけますか?
(パルタップ先生)
世界の人々は現代社会において肉体面だけでなく、感情面、心理面でも苦しんでいます。
アーユルヴェーダ的に言えば、魂レベルでも苦しんでいるということになります。
そういう人々においては単に治療や薬だけではなく、もっと本質的な意味での知識と教育が必要だと思っています。
例えば感情面や心理面についてですが、感情とは何か、感情はどう働くのか、心とは何か、心はどう機能するのか、心理的なトラウマをどう扱うのか、心をどうやって平安にするか、スピリチュアルな成長をどう促すのか、といった全体的なことを知る必要があると考えます。
そのような全体的な問題に対し、体・心・魂の全てのレベルで問題の解決を図ろうとするアーユルヴェーダの「完全なる知識」によるアプローチは、大いに有効であると思うのです。
また現実的な医療効果の面からも、アーユルヴェーダは高い評価がありますが、その理由は「実践性」と「シンプルさ」にあると考えています。
ひとつの例がオイルを用いる治療方法です。
オイルを鼻や臍にさしたり、脚をオイルでマッサージするなど、シンプルな行いが効果を上げています。
こうしたシンプルな行いのひとつひとつを積み上げることが、アーユルヴェーダの本質的な評価を高くし、またアーユルヴェーダの普及にも繋がり、多くの人々を健康に、そして幸せにすることができるようになると思っています。
(インタビュアー)
インドにおけるジヴァ・クリニックではどのような病気の相談が多いのでしょうか。
(パルタップ先生)
ジヴァ・アーユルヴェーダにはコールセンターがあり、毎日約5,000人から健康相談の電話がかかってきます。
それらの相談には150名ものアーユルヴェーダ医師があたり、あらゆる病気の相談に対応するようにしています。
そのなかでも特に多いのは関節炎や消化器系疾患、過敏性大腸炎などがあり、相談件数も増えてきています。
インド人は辛いものを食べるので消化器系の疾患になりやすいと言われますが、これはインド人に限らず西洋人も同様で、現代では多くの人がお酒や肉、脂肪など、熱を高めるものを食べているため、消化器系疾患は世界中でみられます。
また肥満や糖尿病に加え、最近ではガン、エイズ、多発性硬化症、SMDなど難治性の病気も多くみられます。
西洋医学の医師から手遅れと言われた人が最後にたどりつくのがアーユルヴェーダです。
ジヴァ・アーユルヴェーダでは、治療にあたって先ず病気の根本原因を診ていきます。
アーユルヴェーダでは病気の根本原因は「身体」か「心」にあると考えているので、診断では、身体においてどのエネルギーが欠けているのか、あるいは心のどのエネルギーが欠けているのかを診て、治療計画を作成します。
治療には大きく2つあり、ひとつは「ショーダナ・チキツァー」、もうひとつは「シャマナ・チキツァー」です。
「ショーダナ・チキツァー」とはクレンジングであり、「シャマナ・チキツァー」は体内の病気の原因を中立化あるいはバランスをとるための療法のことです。
またアーユルヴェーダの治療は投薬だけではなく、患者さんに対してどのような姿勢・態度でお話をするのか、どのようにコミュニケーションを取っていくのか等についても大切な治療の一環として考えています。
私たちのクリニックにおいては、ドクターと話すだけで体調の50%はよくなると、多くの患者から言われます。
私たちは患者さんにシンプルに、正直に話すように努めています。
治せないことは治せないと言います。
出来ないことを出来るとは言いません。
ただ、患者さんが理解できるように、理論的に話すように努めています。
ジヴァ・アーユルヴェーダのドクターは、常に患者さんに誠実であり、家族のように優しく接し、そしてなにより患者さんにとって時間の無駄にならないように努めることを心がけています。
ドクターが患者さんに接する姿勢や態度は治療の一部なのです。
西洋医学でも同じだと思いますが、しっかり患者に接することが好きな医者と、患者とコミュニケートすることを好まず、下を向いてカルテを書いているような医者とでは、結果が違います。
これらはアーユルヴェーダの古典「チャラカ・サンヒター」にも「薬だけが治療ではない」と明確に記されています。
(インタビュアー)
日本では「うつ」を初めとする心の病が増えており、国民病とも言えるほどに増加しています。
「うつ」で休職する人の数もとても多くて、社会問題化しています。
(パルタップ先生)
ジヴァ・アーユルヴェーダでも、うつ、双極性障害、統合失調症などの精神疾患もよくみられるようになりました。
「うつ」とは心の病であり、心が鈍り、機能低下している心の状態を指します。
アーユルヴェーダでは、鈍った心、活発な心、悪い心、良い心について説明をしています。
アーユルヴェーダの心の状態に関する記述は明確であり、優れた療法もあります。
例えばシローダーラ、ナスヤ、ヘッドマッサージといった外用のトリートメントに加え、心を強くするナチュラルな生薬も使う方法などです。
ホームレメディーも効果があり、アーモンド6~7個を一晩水につけ、翌朝、薄皮をむいてグラインドしたものとシナモン一つまみを半カップのホットミルクに加えて飲みます。
アーユルヴェーダにおけるホームレメディーは様々な方面で有効です。
西洋科学の世界でも、ターメリック、しょうが、黒コショウ、シナモン、フェヌグリークなどのスパイスの薬効についてかなり研究が進められていますが、家庭のキッチンにもあるスパイスの薬効について知ることは大切です。
スパイスや食材についての知識を理解して、家庭でホームレメディーを実践していくことが出来れば、アーユルヴェーダの智慧を日常生活に取り入れることに繋がっていきます。
(インタビュアー)
日本はインドと気候や環境が異なりますが、アーユルヴェーディック・ライフを送りたい日本の皆さんへアドバイスをお願いします。
(パルタップ先生)
いい質問ですが、答えは簡単です。
気候、環境、文化が違っても、アーユルヴェーダの原則はどの国でも同じです。
日本人であろうとインド人であろうと、全員ヴァータ、ピッタ、カファを持ってて、それぞれの働きはみな同じなのです。
ただ、それぞれの国の文化は尊重しなければなりません。
私はアーユルヴェーダの普及活動の中でいろいろな国を訪れてそれぞれの文化に触れてきた経験から、アーユルヴェーダの考え方に基づく、持続的な健康と充足感を実現するためのプログラム「ジヴァナンダ・プログラム」をつくりました。
体操や呼吸法を含むシンプルなプログラムで、高い効果を得ることができます。
「愛」のメディテーションも含まれています、誰にとっても「愛」は必要なものですから。
天候に合わせた若干の調整が必要なこともあるでしょうが、日本でも「ジヴァナンダ・プログラム」を実行できるはずです。
日本の皆さんに対して言えることは、アーユルヴェーダの原則に基づいて、日本の文化や気候に合った食事や生活習慣を行うことが大切だということです。
(インタビュアー)
今日は貴重なお時間を頂いてありがとうございました。
(パルタップ先生)
こちらこそありがとうございました。
(取材協力)
ジヴァ・ジャパン
https://www.jiva-ayurveda.jp/
(ジヴァ・インスティチュートについて)
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ジヴァ・インスティチュートは3つの活動から成り立っています。
1. 教育(地元の子供達のパブリックスクール)
2. アーユルヴェーダ(ジヴァ・アーユルヴェーダ)
3. 哲学(ヴェーダ哲学)
ジヴァ・アーユルヴェーダはインド・ファリダバドにメインのクリニックを置き、インド各地にパンチャカルマセンターがあります。
ファリダバドのコールセンターには150名のアーユルヴェーダ医師を擁し、1日約5,000件の健康相談の電話に対応しています。
ジヴァ・アーユルヴェーダではアーユルヴェーダ・ヘルスケア製品開発も行っており、アーユルヴェーダの古典経典に記載されているレシピに基づいたヘルスケア製品を約200品目以上開発しています。
またドクター・パルタップ・チョハンは、インド国内テレビ4局における健康相談番組に出演しており、インドではおよそ5,000万人が視聴する人気番組にもなっています。
(インド・ジヴァ総合サイト|Jiva Institute)
http://www.jiva.com/
(ジヴァ哲学部門|Jiva Institute Vrindavan)
http://www.jiva.org/
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(シヴァ・ジャパンについて)
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ジヴァ・ジャパンは、北インドのファリダバドに拠点をおくジヴァ・アーユルヴェーダの日本代表です(東京都・世田谷区)。
主にアーユルヴェーダスクールの運営が活動の中心となり、健康コンサルテーションやトリートメント、シヴァによるアーユルヴェーダ季刊誌「PARAMAYU」の翻訳活動や、インド・ジヴァへの教育ツアーも行っています。
また、がんクリニックと協働で、がん患者さんのためのプログラムにも取り組んでいます。
(ジヴァ・ジャパン)
https://www.jiva-ayurveda.jp/
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