今回のアーユルヴェーダ・インタビューは、東京・南青山においてアーユルヴェーダ医療を行われている蓮村誠先生(医学博士、マハリシ・アーユルヴェーダ認定医)よりインタビューの機会をいただきました。
アーユルヴェーダに関する著書も数多く書かれている蓮村先生は、アーユルヴェーダ専門医療機関であるマハリシ南青山プライムクリニックの院長先生でもいらっしゃいます。診療に当たる傍ら全国各地での講演活動、書籍執筆、テレビ出演、雑誌の連載など、マハリシ・アーユルヴェーダの普及に精力的に取り組まれています。
インタビューは、マハリシ南青山プライムクリニック様のご協力により、蓮村先生が診療をなさっている南青山にあるクリニックにおいて、お話をおうかがいさせていただきました。
(インタビュアー)
アーユルヴェーダを初めて聞かれる方にも向けて、まずアーユルヴェーダとはどのようなものであるのか、お話をお聞かせいただけますか。
(蓮村先生)
アーユルヴェーダは、サンスクリット語の「アーユス」=「生命」若しくは「寿命」という意味の言葉と、「ヴェーダ」=「知識」または「科学」という意味の言葉の、2つの言葉から出来ています。
その歴史は非常に古く、医学の源といわれているくらいですから、数千年という単位によるものと一般にいわれます。
そもそも、「ヴェーダ」というインドの古い知識体系は全部で40程あるのですが、その中の一つがアーユルヴェーダであり、アーユルヴェーダは生命に関する知識ということになります。
ヴェーダは「科学」といっても、現代科学のような研究者が実験室・研究室で研究を行い、理論あるいは公式を作り上げていくというようなものではなく、古代インドにおいて、自然界や宇宙の成り立ちを聖者・聖人と呼ばれる人々が認知し、それを具体的な形にしたものであるといわれます。
つまりヴェーダとは、自然や宇宙の成り立ちから摂理・秩序といったものを具体的な医療や建築技術といった知識に、あるいは法則として見出し、それを形にしたものです。
アーユルヴェーダは、そうしたヴェーダの知識が基になっているものとされています。
しかしながら、アーユルヴェーダはその長い歴史の中で、全体をそのままの姿で留めておくことが難しい知識であることも理由にありますが、その多くの知識が散逸し、また部分的なものになってしまった経緯があります。
本来アーユルヴェーダというものは「人の生命」全体を扱うものであり、その人自身の成長や幸福の拡大を目的として、また最終的にその人が「人」として完成していくためのものであり、そうした概念や知識までもが含まれていたものだったのですが、多くが散逸し断片的なものになってしまった結果、単に医術として人を治すための手段としてのみ理解されてしまっていた時期がありました。
そうしたアーユルヴェーダの状況に対し、1980年代、現代の優れたアーユルヴェーダの医師たちが古いアーユルヴェーダの教科書を基にしながら、もう一度本来の姿を復活させようという活動を始めたのです。
この活動はマハリシという人物を中心に行われたのですが、それゆえ彼を中心として再現されたこれらのアーユルヴェーダの知識は「マハリシ・アーユルヴェーダ」と呼ばれるようにもなりました。
現在、私たちのクリニックで行っているのは、このマハリシ・アーユルヴェーダに基づいたものとなります。
(インタビュアー)
先生のクリニックで行われているマハリシ・アーユルヴェーダについて、もう少し詳しくお話をお聞かせ頂けたらと思います。
(蓮村先生)
たとえば「身体」という側面からみたときに、ヴァータ・ピッタ・カファといったドーシャについての考え方や、ハーブや薬草等に関する知識については、一般的なアーユルヴェーダと大きな違いはありません。
しかし、マハリシ・アーユルヴェーダでは生命を大きく「意識」「心」「身体」「環境」という4つの分野で考えていきますが、この内「意識」という分野に対するアプローチは、現在のインドを含め、一般的なアーユルヴェーダにおいてはほとんど行われていません。
マハリシ・アーユルヴェーダでは、この「意識」に対するアプローチを、本来のアーユルヴェーダにおいて大変重要な部分であると捉えており、「意識」という側面を取り扱っていかないと本当のアーユルヴェーダの姿にはなっていかないと考えています。
ここがマハリシ・アーユルヴェーダの大きな特徴であると思います。
具体的には、たとえばマハリシ・アーユルヴェーダでは「意識」へのアプローチとして、クリニックにみえられた患者さんに対して瞑想をご紹介しています。
これは、瞑想を行うことによって患者さん自身の意識が変わり、自分自身で心と身体を整えることが出来るようになると考えているからです。
「こういうものを食べた方が良い」「こういう生活を行う方が良い」というアドバイスひとつ取っても、人は外から教わっただけだとあくまでも「情報」になってしまって、なかなかその人の中に残ってはいきません。
しかし、瞑想によって意識が変わると、それらを「知識」として理解をしていくことが出来るようになり、その人の内側から自分自身を整えていけるようになっていきます。
このように自分で自分自身に気づいて理解をしていくこと、私たちはそのことが本来のアーユルヴェーダの姿であると考えているのです。
(インタビュアー)
先生は日本の医師でもいらっしゃいますが、アーユルヴェーダと西洋医学との違いについても、お話をお聞かせ頂けますか。
(蓮村先生)
西洋医学、つまり現代医学は病気の原因を求め、その原因を駆除、あるいは病気に効くと思われるものを与え、患者さんの「病気を治す」という考え方をします。
そのため医学とは、病気を治すため、あるいは病気というものを中心にみていく学問と捉えられています。
一方、アーユルヴェーダでは、患者さんの内側には本来の健康な状態を築いて作り出す力があるという考え方をします。
患者さんの内なる力を引き出すことで、患者さん自らが自身を整えていけるようになり、更には自然に不必要なものを食べなくなり、健康の維持になすべきことを自らが行えるようになっていく。
そして、そのようにして心身の全体が健康となることで、結果として病変としてあらわれていたものも自然に消失すると考えるのです。
「病気」に焦点をあてて考えているのか、それとも心身全体の「健康」を中心に考えているのか、西洋医学とアーユルヴェーダの根本的な違いはそこにあります。
アーユルヴェーダは病気をみる学問ではなく、「完成された健康」をみる学問なのです。
この点において西洋医学とは全く方向性が異なるものです。
近年、日本における医療としてのアーユルヴェーダの知識や技術に対して、西洋医学的な考え方から「病気を治すための医療」という見方になってしまっている面があるように思います。
これは、当然のことなのですが、医療としてのアーユルヴェーダに取り組まれている方が西洋医学の医療に携わっている方なので、アーユルヴェーダに対する理解の仕方も西洋医学に則ったものになってしまっているからです。
それゆえアーユルヴェーダに対しても、「病気を治療する」「病気を診る」という観点で考えてしまっているところがありますが、これは誤っていると思います。
ここにAさんとBさんという、二人のお菓子職人(パティシィエ)がいるとします。
Aさんは毎日最上級のお菓子を食べて、最良の材料で一番美味しいお菓子を作ろうと、日夜研究を続けています。
一方のBさんについては、とにかく不味いお菓子を食べ続けて、ひとつひとつのお菓子において何が美味しくない原因なのか毎日分析・研究を行っています。
Bさんはお菓子が不味くなる原因やそうした材料に関しては大変なエキスパートになりますが、反面、一度も美味しいお菓子を食べたことがなく、その味を知らないBさんは、結果として一番美味しいお菓子を作ることは出来ません。
西洋医学は、この場合のBさんにあたります。
西洋医学は、病気に関しては大変なプロフェッショナルであり、技術も発達しています。
様々な病気に関する種類や分類、診療方法等についても膨大な量の知識がありますが、実は健康そのものについての理解はあまりありません。
西洋医学では、本当の健康というものが、どういうものであるのか分かってはいないのです。
普通、現代の人々に中に、本当の健康というものはほとんどありません。
多くの人々は常に大小何かしらの健康上の問題を抱えています。
そうした状況において、一般平均として健康な状態はこのくらいだと認識はあっても、本来のあるべき姿の健康というものについての理解を得ることは難しいことです。
これは仕方のないことでもあります。
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アーユルヴェーダでは「完成された健康」という定義があり、全ての人はそこを目指すものという考え方があります。
私たちのクリニックには「そこそこ健康な方」「少し病気な方」「大病を患っておられる方」など様々な患者さんがみえられますが、私たちは皆さんに同じように、全ての方が最上な健康を得られるようにするためのアプローチを行っています。
重い病気の方にアーユルヴェーダ医療を行うことで健康状態が改善されていくということは勿論ですが、「そこそこ健康な方」にも同様なアーユルヴェーダ医療を行うことで、その方はより一層健康になって、現在よりもっと元気になられていくのです。
西洋医学では病気による痛みを消すことは出来ても、健康になるということはありません。
その部分の症状を緩和することが出来ても、身体全体を健康にするというものではないのです。
これは西洋医学が悪いと言っているのではありません。
西洋医学は必要なものであり、生死に関わるような緊急性のある重い症状に対処するためには西洋医学は大変有効です。
ここで言っていることは、西洋医学が病気をみる、病気に対処する医学であるということなのです。
西洋医学では特定の内臓疾患の患者さんに対して、臓器や組織といった単位で診ていきます。
これは西洋医学が病理学、細胞病理から発達している学問ゆえです。
西洋医学の医療では、病気の発生している部位に対して局所的に対処はしますが、患者さんその人を全体として診ることはありません。
病気として現れた部位に対して処置を行い、一時的にはその部分を修復しますが、また別の箇所に問題が出てくるといったケースも少なくありません。
これに対してアーユルヴェーダでは、患者さんその人を全体として捉えます。
処方も「完成された健康」を目的として行い、その人全体を整えることで、どこか部分的に病気として現れているものについても、自然に消えていくものであると考えます。
アーユルヴェーダは、人を全体として整えていく、健康にしていく医学であるということです。
私たちは、本来のアーユルヴェーダが「完成された健康」のための知識であることを再認識し、それらを基にしたアプローチについてもっと大切に取り組んでいく必要があると考えています。
(インタビュアー)
先生のクリニックにおいて行われているアーユルヴェーダの診療についてご紹介頂けますか。
(蓮村先生)
初めて診察の方においては、まずは大体1時間を掛けて問診・脈診を行い、患者さんの心身全体の状態を詳細に診ていきます。
そして、それらを踏まえて食事や生活スタイルの指導、必要によってハーブや薬草等の提示を行っていきます。
薬草については、大抵2~3種類を提示しますが、その内容は色々なものがあります。
例えば、消化器や排泄器官の働きを本来の状態に整えていったりするものがありますが、これらは単に身体の働きを整えるというだけではなく、身体の中に溜まっているアーマと呼ばれる毒素を浄化するためのものであったり、オージャスや免疫力を高めるものなどを併示しています。
また患者さんの状態によっては、クリニックで行っている様々な施術についてもご紹介をしていきます。
これらの施術については、1日単位で行うものや、何日もかけて行っていくものなど様々な種類があります。
患者さんには大体1~2ヶ月毎に通って頂き、病状や健康状態の確認を行いながら治療を進めていく形となります。
ご相談に来られる患者さんの病状は様々で、内科・婦人科系や心療内科的な症状など多岐にわたりますが、いずれの患者さんに対しても、アーユルヴェーダの食事や生活面の改善指導を行っています。
多くの人がご自身の身体においてあまり好ましくない食生活を送られている場合が多く、それらはその人の症状に影響を与え、また病気の原因にもなっていますので、食生活や生活スタイルの改善はとても大切なものになります。
(インタビュアー)
記事をご覧いただいている皆さんへアドバイスやメッセージを頂けたらと思います。
(蓮村先生)
私たちのクリニックに最近来られる皆さんの中で、特に震災以降ですが、精神的に弱っている、あるいは疲れているという方が本当に多くいらっしゃるように思います。
病状のご相談のメインがメンタル的な内容ではなかった患者さんも、実際には精神的に不安定であったり弱っていたりするという方が少なくありません。
「やる気がなかなか出ない」「気持ちが疲れてしまっている」「漠然と悲しい気持ちが溜まってしまっている」など、メンタル部分における問題を抱えてしまっている方が大変多いように思います。
震災そのもののショックも勿論ですが、それ以降の不安定な社会・経済状況が続く中で、皆さんが少しずつ疲れてきてしまっている部分もあるのだろうと思います。
人はそうした精神的に疲れたり弱ってくる状態になると、多くの場合、身体が冷えてきてしまうようになります。
関連して消化力も落ちてきます。
そのような身体の状態においては、とにかく冷たいものは飲食するべきではありません。
身体もなるべく温めるようにします。
温かいお湯を飲むようにするなどして、胃腸も温めるようにします。
お風呂などでは半身浴などを行い、とにかく身体を温めるようにしていきます。
身体の中を温めると、身体の中に「火」が戻ってくるようになり、内側から元気を取り戻すことが出来るようになります。
震災以降、日本はなかなか元気の出ない状態にあると思います。
社会や経済にも活気がなく、各方面の産業も大きく発展しているわけでありません。
日本全体が元気がなく、まさに冷え込んできているような状態です。
こうした状況の原因のひとつには、人ひとりひとりが、皆さん冷えているからなのかも知れません。
社会とは人々が集まって成り立っているものですから、ひとりひとりが冷えてしまっていると全体に伝播していくわけです。
ですから、皆さんひとりひとりが元気になれば、社会もまた元気になっていくものだと思います。
アーユルヴェーダの智慧を活用し、是非皆さんがどんどん元気になっていただきたいと思います。
アーユルヴェーダは、人々が元気に健康になって、幸福に生きていくための科学です。
学問ではありながら、実際に楽しみながら実践し体験して頂いて、アーユルヴェーダによって自分が健康になっていくことの実感を持って頂けるようになったらと心から願っています。
(インタビュアー)
貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
(蓮村先生)
ありがとうございました。
(取材協力)
医療法人社団邦友理至会 マハリシ南青山プライムクリニック
(今回のインタビューでおうかがいさせていただいた場所)
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医療法人社団邦友理至会 マハリシ南青山プライムクリニック |
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(マハリシ・アーユルヴェーダ専門医療機関としては日本初の広域医療法人)
私たちは、1992年よりマハリシ・アーユルヴェーダ専門医療機関として医療活動を行って参りました。
マハリシ・アーユルヴェーダは、対症療法を得意とする現代西洋医学に対し、個々の生命力(自然治癒力)を高め、
各種症状の軽減、病気の予防、そして健康増進を実現するための医療です。
また、2005年には多くの方のご要望にお応えすべく新たに美容プログラムも拡充させ、
マハリシ南青山プライムクリニックを開設いたしました。