太陽の日差しも強くなり、新緑だった木々の緑も濃くなる季節「夏」。
最近では日本でも、場所によってはインドに負けないくらいの猛暑に見舞われ、夏の「暑さ」の基準も年々高くなってきているようにも思われます。
熱中症はもちろんのこと、暑さで寝苦しい夜を繰り返し、睡眠不足などから体調を崩される方も多くなる季節です。
アーユルヴェーダの先生からアーユルヴェーディックな生活を送る上でいただく「季節のアドバイス」、第2回となる「夏」については、5月に来日されていたジヴァ・アーユルヴェーダのパルタップ・チョハン先生にお話をお聞きしました。
今更いうまでもありませんが、夏は「暑い」ですね。
暑いわけですから、アーユルヴェーダでもピッタが増える季節と定義されます。
この季節に起こりやすい病気についても、ピッタ性の疾患が多くなります。
つまり、この時期に季節に適した養生を怠ると、体内に熱が籠ることが原因となる病気になりやすくなるということです。
夏は、暑さから体力の消耗も当然起きやすく、加えて、気温が高くなることから、様々な雑菌やばい菌が繁殖しやすい状況になり、食中毒や感染症になりやすい条件が揃う季節でもあります。
ですから油断をすると簡単に体調を崩してしまいます。
アーユルヴェーダでは、季節についての考え方として、まず1年を2つに大別するところからはじめます。
ひとつは「アダナ カル(adana kal)」、もうひとつは「ヴィサルガ カル(visarga kal)」です。
「kal」は「時」という意味です。
それぞれは、太陽の動きに従って6ヶ月ずつの期間に定められます。
そしてそれぞれの期間においては、各々3つの季節に分けられます。
つまり1年は6つの季節に分かれることになります。
ただ、これはアーユルヴェーダの発祥の地インドを基準としており、この6つの季節は「春」「夏」「モンスーン(レイニーシーズン)」「秋」「初冬」「冬」に分けられています。
この中で日本における「7月~9月」の季節は、「夏」の季節に相当します。
日本では季節は主に春夏秋冬と4つ、四季に分かれていますね。
このことは、基本的な考え方として、太陽の動きに応じて季節の区切りを地域毎に定義していることに他なりません。
アーユルヴェーダでは、これら太陽の動きによって移り変わる「季節」に応じて、日々の生活習慣や食事の内容といった、ライフスタイルを変えていく必要があると考えます。
たとえば、冬には、車でも冬用のタイヤに切り替えたり、家の中も暖房やヒーターを用意したりと、季節に応じて生活や暮らしを変化させていくでしょう。
それと同じように、生活習慣や食生活も少しずつ見直していくべきであると考えるのです。
とはいえ近年は、あまり季節を気にしないで、一年を通じて同じような食生活を過ごしておられる方も多いのではないかと思います。
寒い季節においては、辛い物を食べてピッタを増やし、身体を温めることを促しますね。
健康のためにも、ランニング等の運動をして、身体に熱を溜めこむようにもします。
外にもなるべく出るようにして、太陽の光をいっぱい浴びて身体に熱を取り込みます。
しかし、これらは冬の寒い季節においては適した生活習慣かもしれませんが、同じようなことを暑い夏の季節に行うべきでしょうか。
夏というとても暑い季節に、身体にも多くの熱が籠っている状態で、辛い食べ物を食べて更に身体を温めることを促して、あるいは強い太陽の光の下でランニングや日光浴を行って身体に熱を溜めこむようなことをすべきでしょうか。
もうお分かりだと思いますが、季節に応じて適した生活習慣や食生活は異なってくるのです。
ですから「季節の養生法」ということが大切になってくるのです。
季節の移り変わりに即さない生活習慣や食生活を行っていると、それだけ体調の不調を招き、そして病気を生み出す原因にもなると、アーユルヴェーダは教えます。
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基本的なことですが、アーユルヴェーダでは、身体の3つのドーシャの組み合わせで成り立っているとされ、ヴァータ・ピッタ・カファの3つのドーシャのバランスが取れている状態を健康として、これらのバランスが崩れてしまった状態を「病気」と位置づけます。
そして、これらのバランスが崩れる要因の多くは、食べ物、ライフスタイル・生活習慣、そして季節にあると考えます。
たとえば、消化力は季節によって異なります。
冬の間、消化力は高くなりますが、春から夏に季節が移り変わっていくにつれ、身体の消化力も低下していきます。
冬は消化力が強くなっているので多少重い食事を食べても構いませんが、夏は消化によい軽い食事をとるべきです。
※もちろん、個々人の体調によっても消化力の強さなどは変わってきますから、一般的にという意味です。
季節の消化力や個人の体調に適さない性質の食べ物や、過剰な量の食事は、身体の中で正しく消化することが出来ず、万病のもとである未消化物からできる毒素「アーマ」を生みだします。
「アーマ」は身体の中で、様々な体調不良を引き起こします。
ですから、「季節の養生法」の基本的なポイントは、
1. ドーシャのバランスを取ること。
2. 消化の火「ジャタラグニ」を適切な状態に保つこと。
3. 「アーマ」が作られないよう適度な食事を心がけること。
以上の3つがあげられます。
これらは全ての季節に共通して言えることでもありますね。
日本人をはじめ、多くの先進国の人々は、季節にあまり気を遣わず、一年を通じて同じ食生活・同じ生活習慣を行っている人々が多いようです。
アーユルヴェーダでは、こうしたライフスタイルが多くの生活習慣病の原因であるとも考えています。
私達の身体は、私達自身が意識しているかどうかに関わらず、太陽の動きによって移り変わる季節に応じ、身体のドーシャのバランスは変化し、消化力も異なってきます。
私達がこの地球上における生活環境の中で生きていく上で、自然の摂理に合わせ、季節に応じてライフスタイルを少しずつ変えていくということは、決して特別なことではなく必然的なことである、とアーユルヴェーダは語っているのです。
「夏」は、身体に「熱を溜めてしまう」食べ物や飲み物は避けなければなりません。
太陽の熱が身体にとても溜まっているところへ、温性の、熱を溜めこむような食べ物・飲み物を摂ってしまうと、かゆみ・皮膚疾患といった症状も起きやすくなります。
現在、私たちの生活においてはエアコンをはじめとする様々な空調・冷却設備が整えられていますが、この時期は生活環境全体が暑くなっています。
建物の屋根や壁、地面や道路など、それらは昼間の太陽の熱を溜めこんでいます。
同じように、畑の野菜や果物も、冬の季節の太陽に比べてはるかに強いエネルギーを受けています。
これは同じ野菜や果物でも、その時期によって、蓄えられている潜在的なエネルギーは全く異なるものであるということです。
ですから、それらの食べ物が身体に与える影響も、時期、すなわち季節によって異なってくるということでもあり、本来は、食材の性質はもちろん、それらが収穫された時期などにも気を付けるべきでしょう。
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とにかく、この季節は、身体をクールダウンさせる性質のものを食べるべきです。
(これはやみくもに冷たい飲み物や食べ物を食べましょうということではありませんよ)
(すすめられるもの)
・スイカやキュウリ、サラダ。
・甘いもの、果物。
・ご飯、穀物類。
・バターミルク。
(ダメなもの)
・紅茶・コーヒー、アルコール。
・辛いスパイス類(チリペッパーなど)。
・酸っぱい食べ物、発酵食品、揚げ物。
・過剰な肉類(焼肉は特にダメ)
・太陽の光に当たりすぎること。
・激しい運動。
インドでは、スペシャルドリンクを作って飲んだりもします。
作り方は、大麦をローストし、グラインドして粉にして水に入れ、蜂蜜や砂糖を加えて飲みます、簡単ですね。
日本の麦茶と同じような感覚ですね。
でもこれは、栄養補給も出来ますし、クールダウン効果も期待できます。
この季節は「クールダウン」が重要ですからね。
その一方、日本の近代設備のオフィス・ビル等において、過剰なエアコンの効きすぎによって、夏の季節に身体が冷えてしまう等の状況もあると思います。
そのような場合には、先ずは発汗をすることが大切で、帰宅をしたらゴマ油で軽くマッサージをするなどして身体を温めて、そしてお風呂でも湯船にちゃんとつかって、とにかく汗をかくようにすることをお薦めします。
夏の季節にピッタが増えている状態でゴマ油を使用しても良いのかという質問があるかと思いますが、基本的には問題ありません。
ただ、ゴマ油に敏感でかゆみが出る等という方は、ココナッツ・オイル等の代替品を使うようにするべきでしょう。
コリアンダー(Coriander)
別名:香菜(シャンツァイ)、パクチー、ダニヤ(Dhaniya)。
説明:別名「カメムシソウ」の名もあるとおり、独特の風味があるため、人によって好き嫌いが大きく分かれます。葉にはカロチンやビタミンが豊富に含まれており、胃腸のはたらきを促し、新陳代謝を活性させる作用があります。
カルダモン(Cardamon)
別名:ショウズク、エライチ(Elaichi)。
説明:チャイの香りづけによく使われますが、料理や飲み物にあまり香りを立てると薬臭くなります。疲労回復や整腸作用があり、冷性で身体を冷やすはたらきもあります。油分を除く効果もあり、食事の後の口直しにも適しています。
(取材協力)
ジヴァ・ジャパン
https://www.jiva-ayurveda.jp/
(ジヴァ・インスティチュートについて)
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ジヴァ・インスティチュートは3つの活動から成り立っています。
1. 教育(地元の子供達のパブリックスクール)
2. アーユルヴェーダ(ジヴァ・アーユルヴェーダ)
3. 哲学(ヴェーダ哲学)
ジヴァ・アーユルヴェーダはインド・ファリダバドにメインのクリニックを置き、インド各地にパンチャカルマセンターがあります。
ファリダバドのコールセンターには150名のアーユルヴェーダ医師を擁し、1日約5,000件の健康相談の電話に対応しています。
ジヴァ・アーユルヴェーダではアーユルヴェーダ・ヘルスケア製品開発も行っており、アーユルヴェーダの古典経典に記載されているレシピに基づいたヘルスケア製品を約200品目以上開発しています。
またドクター・パルタップ・チョハンは、インド国内テレビ4局における健康相談番組に出演しており、インドではおよそ5,000万人が視聴する人気番組にもなっています。
(インド・ジヴァ総合サイト|Jiva Institute)
http://www.jiva.com/
(ジヴァ哲学部門|Jiva Institute Vrindavan)
http://www.jiva.org/
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(シヴァ・ジャパンについて)
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ジヴァ・ジャパンは、北インドのファリダバドに拠点をおくジヴァ・アーユルヴェーダの日本代表です(東京都・世田谷区)。
主にアーユルヴェーダスクールの運営が活動の中心となり、健康コンサルテーションやトリートメント、シヴァによるアーユルヴェーダ季刊誌「PARAMAYU」の翻訳活動や、インド・ジヴァへの教育ツアーも行っています。
また、がんクリニックと協働で、がん患者さんのためのプログラムにも取り組んでいます。
(ジヴァ・ジャパン)
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