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「生命の科学」ともいわれるインド・スリランカ伝統医学アーユルヴェーダ。予防医学・代替医療にとどまらず、高度な生命哲学としても注目されています。アーユルヴェーダでは、食事法(医食同源)・健康法(ヨガ・瞑想)といった日常生活に関わる内容から、「生命」そのものについてまでが語られています。
アーユルヴェーダの季節のアドバイス「秋」
アーユルヴェーダの季節のアドバイス「秋」


厳しい残暑が終わり、朝夕が涼しくなり、日中との温度差が出てくる「秋」。
秋は「乾燥」が気になる季節でもあり、ヴァータが身体に増える傾向もみられます。
夏に比べると過ごしやすくなりますが、高温多湿の夏に変わって爽やかな空気に変わる「秋」は、夏の疲れも加わって、セルフケアが欠かせない季節でもあります。

今回、アーユルヴェーダの先生からアーユルヴェーディックな生活を送る上でいただく「季節のアドバイス」の「秋」については、日本国内におけるアーユルヴェーダの普及・促進の第一人者でいらっしゃる、西川眞知子先生にお話をいただくことができました。


アーユルヴェーダにおける季節の考え方「秋」


アーユルヴェ-ダは生命の科学。その考えの中には「自然に生きること」が根底に流れています。

「無季節的な暮らし方」から「季節を生きる生き方」を大切にしています。

それがリトウチャリヤー(季節に応じた過ごし方)です。

季節はリトウと呼ばれ、季節や気象条件は土地や水、植物、動物さらに私たちに大いに影響を与えています。


常に変化し続けている環境と自分を適合させることは、健康を維持していくためにも大変重要なことです。
季節に順応しながら幸せな毎日を送るコツをアーユルヴェーダから学んでいきましょう。

まずは秋をアーユルヴェーダの古典書から見ていきましょう。
風土が異なる日本ではインドの秋とは少し趣も異なりますが、根底の基本は同じです。

「秋」・・・sarada/シャラダ(インドの季節の見方)

冬至は真昼の太陽が一番低く、その後半年かけて太陽は高くなって行きます。

これを太陽のウッタラヤーナ【北回帰】といいます。 北へ回帰するにつれ、日差しは強くなり、大地は水分を奪われ、人の体力も減退していきます。そのためこの半年をアーダーナ【奪取、RECEIVING】と呼びます。

真昼の太陽が一番高い夏至から真昼の太陽が一番低い冬至にかけては太陽のダクシナーヤナ【南回帰】となります。
南回帰にしたがい日差しが弱まり、月の冷却作用が強くなっていきます。

大地は水分を含み、人の体力も回復するため半年はヴィサルガ【放出、RELEASING】とよばれます。
秋は太陽の南回帰に当たります。そのため月が冴え冷却の力も高まっていきます。



もう少しアーユルヴェーダの古典書から秋の定義を見ていきましょう。


「秋には空が澄み、雲がなく、大地は少々ぬかるむ。太陽の光はキラキラと輝き植物ではハスなどが開花する。米も育成する。雲の群れが遠のき太陽の光は強くなる。ツルの大群が散り散りになり、空一面がすっきりする。・・・」

「日中は太陽光線で熱せられ夜は月の光で冷やされる。秋という自然の性質からagastyaアガスティヤという星の影響で水が無毒化する」

  (アシュターンガ・サングラハ/総論4章)


「秋には太陽は赤茶色を呈し熱くなる。空は晴れ白い雲が浮かんでいる。・・・」

  (スシュルタサンヒター/総論6章)


上記のアーユルヴェーダの古典書から秋のキーワードを抜き取ってみると、

「空が澄み高い、水がきれい、熱が関係する、月、お米の生育」など。

このキーワードはちょうど日本の秋に当てはめることができます。

例えば「お月見、お米の収穫、天高く・・・」など、日本でも秋に使われる言葉です。



アーユルヴェーダはその基本さえ理解していると、いつどのようなときも対応できる「科学」です。

そのためインド生まれのアーユルヴェーダを日本の季節に即して理解もできます。

また現在の温暖化にも対処法を示すことができます。
それが「生きたアーユルヴェーダ」だと思います。

日本の秋をアーユルヴェーダのリトウチャリヤーに即して理解していきましょう。

初秋は夏の熱のピッタの影響が大きく夏の間に溜まった体熱を解毒させることが大切です。

徐々に晩秋に向けてヴァータの影響が朝晩の涼しさから始まり、空が高くなり、食欲が戻ってきます。
その反面風邪をひきやすくなったり、疲れが急に出てきたり、あちこちが痛くなったりヴァータ症状多く表れてきたりもします。

次に四季の変化をドーシャで見ていきましょう。

カパ「春・芽吹き構造の力が高まる」→ピッタ「夏・盛りとつやの力が高まる」→ピッタ・ヴァータ「秋・成・実り収穫・色づく力が高まる」→ヴァータ「冬・乾きと冷えの力が高まる」と、す~っと馴染んできませんか?

それぞれのドーシャが優勢な時期は、同じ北半球でも地域によって気候が少しずつ違うので、日本での目安は次のようになります。

併せて、その時期に合った(=自然の摂理に従って)暮らし方のヒントを幾つかお話していきます。



(自然の摂理に寄り添う暮らし)

~ピッタ優勢/6月半ば~10月半ば~

ピッタの季節は、火が優勢。 気温も上がり、体力が消耗されやすく、身体の中に熱を発生させるような激しい運動、とくに炎天下の運動は避けることが大切です。
しかも日本の梅雨から夏は高温多湿です。
湿り気が火をさらに消しやすくなってしまい消化力も下がります。

山のさわやかな空気や海の青、さらには森林浴などがよいです。

また熱性の強いスパイスは控え目に。
スパイスの中にもそれほど熱性でないコリアンダーはお勧めです。

現代の夏の生活は、つい冷房の部屋に入りっぱなしの生活習慣で身体の体温調整機能が衰え、熱をうまく出せなくなります。
ピッタの季節に入る前に足湯や日頃の運動などで健康的に汗をかけるカラダにしておくと暑さへの耐性がつき、夏を快適に過ごすことが出来るようになるでしょう。
暑い時の汗は体熱を放出してくれる大事な体の智慧だからです。

秋は、夏の間ピッタをため込むと、ピッタが悪化し体調を崩しやすくなります。
秋が深まる前にタイミングをみてピッタの解毒が大切です。

春の解毒同様、秋も解毒を行うにはよい季節です。

秋の解毒は、パンチャカルマの中では「冩下法」(ヴィレーチャナ)と「瀉血法」(ラクタモークシャ)が勧められています。

~ヴァータ優勢/10月半ば~2月半ば~

ヴァータが増えていく季節は、ヴァータにある空と風の要素が優勢になり軽くなります。

太陽の光を浴びたり、服装を暖かくしさらに運動などで身体に熱を与え、十分な睡眠をとり、温かいものを食べ・飲むようにします。

油は「重く」するからヴァータには良いのですが、揚げ物は食材が油を吸い過ぎていますので、油を適量使った炒め物の方がよいです。

この季節は、冷え・乾燥しやすいヴァータの人は体調を崩しやすくなります。
晩秋は空が高くなってきたり、朝晩の涼しさから夏の火のピッタにプラス、ヴァータが増え始めてくると考えられます。


日本の秋は三つの秋「秋」


初秋はピッタの中にすこしヴァータの兆しが「中秋はピッタ・ヴァータ」「晩秋はヴァータ・ピッタ」と秋の表情が移り変わっていく日本。

初秋はまだまだ暑い日が続きますが、真夏よりは朝晩の涼しさがほっと一息与えてくれます。

そのような季節に日本の旬は、まずは熱を冷まし潤わせる梨やブドウ、ナスなどの恵みを与えてくれます。

さらに秋は実りの秋ともいわれ、豊潤な甘みやコクのある食材が豊富になります。


ピッタとヴァータをバランスする味は甘み。
少し安定感のあるもの。

これは少し地の要素を捉えることができます。
中秋は月を愛で、晩秋は徐々にヴァータが優勢になり、ヴァータピッタとなり、涼しさと乾燥が気になり始めてきます。

新米、さつまいも・・・。
秋のおいしい味はピッタとヴァータのバランスに適しているといえます。

きのこ類全般は意外とたんぱく質や脂質が多く、カロリーは低いため食欲の秋の食べ過ぎにも、ヴァータをバランスするための栄養素も十分でこの時期にあった食材といえるでしょう。

(秋の身体と秋の野菜)

夏やせおよび夏バテの回復は、秋に向かって大事なことですが、日中の暑さが残っているピッタヴァータの時期に、「食欲の秋」とばかり食べ過ぎるとかえって消化器系に負担がかかります。

「妻の座」としてお刺身のツマとしても必ずつかわれるダイコン。
台所で働く女房役それがダイコン。

もともとダイコンはカイワレ菜から沢庵、さらには干し大根までと言われるくらい様々な姿に変身し味も辛みから甘みと季節によって変わっていきます。

兼好法師の『徒然草』に「土大根はよろずにいみじき薬とて」と記されたり日本の食文化に大きな力となっています。
夏の大根は辛味が強く消化を促し、秋になると甘みが徐々に増しピッタ・ヴァータをバランスしてくれます。

カボチャは完全食。
成熟するとともに糖分が増すかぼちゃは、秋のピッタヴァータには適度な糖分を与える完全食として大切にされています。
さらに秋が深まると身体が要求する野菜。それがサトイモと山芋。

サトイモのムチンの成分は長寿食とも言われます。
ムチンはタンパク質と糖質が結合した粘性物質。
胃壁や腸壁の潰瘍を防止して内臓を強化し、夏につかれた胃や腸にやさしい食材と言えるでしょう。
また山芋は消化酵素のジアスターゼが大根よりも多いと言われています。

実りの秋に収穫される代表格のお米も甘味のある食材としてピッタとヴァータのバランスに最適です。


アーユルヴェーダの季節における対処法「秋」


秋の旬のものを少しアーユルヴェーダに即してみていきましょう。

(にんじん)

夏の紫外線でダメージを負った目の粘膜を修復し、疲れ目を回復し、ビタミンAが紫外線によってできたシミそばかすなどの皮膚のトラブルを修復・予防してくれます。
このようににんじんは夏のピッタの悪化から起こる目のトラブルに力を発揮してくれます。
アーユルヴェーダではピッタの憎悪に向くとされています。


(ブロッコリー)

ルティンというカロチンの一種が抗がん作用として働きます。

晩秋からヴァータが増えると異化作用で老化が促進しやすくなりますが、ブロッコリーに含まれるビタミンC、Eが細胞の活性化を促し、結果として老化防止に繋がります。

気温の変動のある秋に取ることで、冷え性や風邪の予防にもなります。

また緑の色はピッタのバランスにもぴったりなので、彩も楽しんでいただきましょう

(きのこ類)

植物繊維が内臓脂肪などの蓄積した余剰脂肪を排出します。
血中コレステロールの解消し、動脈硬化や高血圧を予防します。
ピッタ~ヴァータのバランスを必要とする秋には、食物繊維は必須ですね。

(里芋)

植物繊維、ムチンは冷たいものを食べ過ぎた胃の粘膜の修復、カリウムは過剰に摂取した塩分の排出に効果的です。
ガラクタンが脳細胞活性物質として認知症や物忘れの予防に期待されています。

ピッタの過剰は胃酸過多や胃の粘膜の荒れも起こすといわれます。

秋の里芋は、アーユルヴェーダの大切な食材のひとつですね。
きぬかつぎのような食べ方がぴったりです。

(さつまいも)

ビタミンCが風邪の予防をしてくれます。
皮に含まれるアントシアニンは、抗酸化作用のあるポリフェノールの一種で、がん予防と体の活性化になるといわれています。
さつまいもの甘みは、ヴァータにもピッタにも味方となる味です。
この時期のサツマイモは、おみそ汁の具などいろいろな調理法でいただきましょう。

この他、落花生、レンコン、ゴマ、菊、まつたけ、もやし、まいたけ、にら、ゴボウ、カリフラワー、しいたけ、ししとう、しめじ、かぶ、山芋、お米などの豊富な食材があげられますね。


西川眞知子先生の季節のアドバイス「秋」

アーユルヴェーダでピッタを鎮める代表的なものに「ギー」があります。

初秋はごま油などよりも、ギーなどを使って日本の旬の素材を調理することも、インドと日本の融合になりそうですね。
たとえば、きのこのギー炒め、味付けはピッタを悪化しにくい岩塩など、相性が良いでしょう。

晩秋になるに従い、朝晩の冷えを感じるようになります。
空は高く、消化力も戻ってきておいしいものがいただける秋を満喫できる、そんな自然に即したライフスタイルを送りたいものです。



秋のお月見は夜がふけないうちにして、ピッタを鎮めるとよいでしょう。
深夜までの月光浴は健康を損ねるともアーユルヴェーダではいわれています。

インドと日本は気候も風土も異なることが多くあります。

ところが昔ながらの日本の風習をアーユルヴェーダの観点から見るとなるほど、とうなずくことが多くあることに気づけます。
やはりアーユルヴェーダは生命科学といわれる所以でしょう。
時代や空間を超えたものですから。

自然現象の力の中で徐々に太陽の力から月の力が多くなり、晩秋ともなると風の力が強くなっていきます。

そのため肌に潤いが少なくなり、肌のケアにも少し豊潤な素材が必要になる方も多いのではないでしょうか。

その時には肌の声にも耳を傾け、丁寧な肌のケアが大切です。
かかとも髪もパサつくと感じたら、すぐにケアしましょう。

涼しくなるのにしたがって、冷たい飲み物や水分量を減らし、運動量を少しづつ増やしてみましょう。
ヨーガのアーサナ(ポーズ)はおすすめです。

シルクの衣類やシルクの靴下など下着にも気を使ってみましょう。

白・緑・青などの色も秋に合う色です。
秋を満喫しながら日常生活で簡単健康法を実践してみましょう。



<日常で簡単に行える秋のアーユルヴェーダ健康法>

① 睡眠の質をよくする(短時間でもぐっすり眠る)。
② 休息をきちんととる。
③ 食べ過ぎない(特に夜)。
④ 入浴で発汗しながらよく温まる。
⑤ オイルマッサージを行う(生ごま油かオリーブオイルで)。
⑥ 無理をしすぎない。

アーユルヴェーダは頭で考えるより、あなたの身体や心のサインに早く耳を傾け対処することが大切と言っているはずですから。

古典書には「秋は花飾りをするとよい」とありますが、日本では菊人形などが昔から珍重されています。
自然界の紅葉も、まさに美しい彩を与えてくれます。

そのような日本の秋を『国家の品格』で藤原氏が「日本人にとっての紅葉は愛でるものだが、海外では枯れたただの葉っぱとされることがある」とも述べています。
日本の秋は世界のどこよりも情緒と物語にもなるような季節です。

秋の水は最も健康によいとインドの古典書は言っています。
日光で温められ、月光で冷やされ、時の経過で熟され、アガスティア星(カノープス)によって毒を抜かれているということです。

秋は神社仏閣などの、名水めぐりの旅などもいいかもしれませんね。




フェンネル
フェンネル(Fennel)

別名:ういきょう、フヌイユ、ソンフ(Saunf)
説明:若い葉および種子(フェンネルシード)は、甘い香りと苦味が特徴的で、食用、薬用、化粧品用などに古くから用いられています。中国では五香粉の原料とされています。消化促進、消臭、解毒作用があり、下痢や腹痛に効果があります。

クミン
クミン(Cumin)

別名:馬芹、ジーラ(Jeera)
説明:インド料理に必須のスパイスのひとつで、ガラムマサラやチャツネを作る際にもよく使われます。健胃・消化促進・解毒・駆風などの効能があり、下痢や腹痛の際にはホールのまま料理に入れます。


(取材協力)
 日本ナチュラルヒーリングセンター(株式会社ゼロサイト)
 http://jnhc.co.jp/



(日本ナチュラルヒーリングセンター(株式会社ゼロサイト)について)

ナチュラルヒーリングは「自然の癒しの力」という意味にとらえています。
さらにセンターは「中心」で、ナチュラルヒーリングセンターにたとえ不自然な状態にあっても自然に戻る力は外にあるのではなく、あなたの内にすでにある、というメッセージを託しています。

今までの見方を完全に変えた見方、偏見や刷り込みのない新たな見方。それがゼロサイト、ゼロからものを見るということ。
ナチュラルヒーリングとゼロ視点で、セミナー、講習会、コンサルティングを通して個人から企業までの個性を最大限に活かし、他の真似ではない、「じぶん軸」を育むお手伝いをしていきたいと考えています。
それはその土台となるアーユルヴェーダが生命の持つ素晴らしい知恵を最大限に引き出すものだからです。

【日本ナチュラルヒーリングセンター(株式会社ゼロサイト)】
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