常に変化し続けている環境と自分を適合させることは、健康を維持していくためにも大変重要なことです。
季節に順応しながら幸せな毎日を送るコツをアーユルヴェーダから学んでいきましょう。
まずは秋をアーユルヴェーダの古典書から見ていきましょう。
風土が異なる日本ではインドの秋とは少し趣も異なりますが、根底の基本は同じです。
「秋」・・・sarada/シャラダ(インドの季節の見方)
冬至は真昼の太陽が一番低く、その後半年かけて太陽は高くなって行きます。
これを太陽のウッタラヤーナ【北回帰】といいます。
北へ回帰するにつれ、日差しは強くなり、大地は水分を奪われ、人の体力も減退していきます。そのためこの半年をアーダーナ【奪取、RECEIVING】と呼びます。
真昼の太陽が一番高い夏至から真昼の太陽が一番低い冬至にかけては太陽のダクシナーヤナ【南回帰】となります。
南回帰にしたがい日差しが弱まり、月の冷却作用が強くなっていきます。
大地は水分を含み、人の体力も回復するため半年はヴィサルガ【放出、RELEASING】とよばれます。
秋は太陽の南回帰に当たります。そのため月が冴え冷却の力も高まっていきます。
もう少しアーユルヴェーダの古典書から秋の定義を見ていきましょう。
「秋には空が澄み、雲がなく、大地は少々ぬかるむ。太陽の光はキラキラと輝き植物ではハスなどが開花する。米も育成する。雲の群れが遠のき太陽の光は強くなる。ツルの大群が散り散りになり、空一面がすっきりする。・・・」
「日中は太陽光線で熱せられ夜は月の光で冷やされる。秋という自然の性質からagastyaアガスティヤという星の影響で水が無毒化する」
(アシュターンガ・サングラハ/総論4章)
「秋には太陽は赤茶色を呈し熱くなる。空は晴れ白い雲が浮かんでいる。・・・」
(スシュルタサンヒター/総論6章)
上記のアーユルヴェーダの古典書から秋のキーワードを抜き取ってみると、
「空が澄み高い、水がきれい、熱が関係する、月、お米の生育」など。
このキーワードはちょうど日本の秋に当てはめることができます。
例えば「お月見、お米の収穫、天高く・・・」など、日本でも秋に使われる言葉です。
アーユルヴェーダはその基本さえ理解していると、いつどのようなときも対応できる「科学」です。
そのためインド生まれのアーユルヴェーダを日本の季節に即して理解もできます。
また現在の温暖化にも対処法を示すことができます。
それが「生きたアーユルヴェーダ」だと思います。
日本の秋をアーユルヴェーダのリトウチャリヤーに即して理解していきましょう。
初秋は夏の熱のピッタの影響が大きく夏の間に溜まった体熱を解毒させることが大切です。
徐々に晩秋に向けてヴァータの影響が朝晩の涼しさから始まり、空が高くなり、食欲が戻ってきます。
その反面風邪をひきやすくなったり、疲れが急に出てきたり、あちこちが痛くなったりヴァータ症状多く表れてきたりもします。
次に四季の変化をドーシャで見ていきましょう。
カパ「春・芽吹き構造の力が高まる」→ピッタ「夏・盛りとつやの力が高まる」→ピッタ・ヴァータ「秋・成・実り収穫・色づく力が高まる」→ヴァータ「冬・乾きと冷えの力が高まる」と、す~っと馴染んできませんか?
それぞれのドーシャが優勢な時期は、同じ北半球でも地域によって気候が少しずつ違うので、日本での目安は次のようになります。
併せて、その時期に合った(=自然の摂理に従って)暮らし方のヒントを幾つかお話していきます。
(自然の摂理に寄り添う暮らし)
~ピッタ優勢/6月半ば~10月半ば~
ピッタの季節は、火が優勢。 気温も上がり、体力が消耗されやすく、身体の中に熱を発生させるような激しい運動、とくに炎天下の運動は避けることが大切です。
しかも日本の梅雨から夏は高温多湿です。
湿り気が火をさらに消しやすくなってしまい消化力も下がります。
山のさわやかな空気や海の青、さらには森林浴などがよいです。
また熱性の強いスパイスは控え目に。
スパイスの中にもそれほど熱性でないコリアンダーはお勧めです。
現代の夏の生活は、つい冷房の部屋に入りっぱなしの生活習慣で身体の体温調整機能が衰え、熱をうまく出せなくなります。
ピッタの季節に入る前に足湯や日頃の運動などで健康的に汗をかけるカラダにしておくと暑さへの耐性がつき、夏を快適に過ごすことが出来るようになるでしょう。
暑い時の汗は体熱を放出してくれる大事な体の智慧だからです。
秋は、夏の間ピッタをため込むと、ピッタが悪化し体調を崩しやすくなります。
秋が深まる前にタイミングをみてピッタの解毒が大切です。
春の解毒同様、秋も解毒を行うにはよい季節です。
秋の解毒は、パンチャカルマの中では「冩下法」(ヴィレーチャナ)と「瀉血法」(ラクタモークシャ)が勧められています。
~ヴァータ優勢/10月半ば~2月半ば~
ヴァータが増えていく季節は、ヴァータにある空と風の要素が優勢になり軽くなります。
太陽の光を浴びたり、服装を暖かくしさらに運動などで身体に熱を与え、十分な睡眠をとり、温かいものを食べ・飲むようにします。
油は「重く」するからヴァータには良いのですが、揚げ物は食材が油を吸い過ぎていますので、油を適量使った炒め物の方がよいです。
この季節は、冷え・乾燥しやすいヴァータの人は体調を崩しやすくなります。
晩秋は空が高くなってきたり、朝晩の涼しさから夏の火のピッタにプラス、ヴァータが増え始めてくると考えられます。