アーユルヴェーダにおいて、ドーシャの診断は問診・視診・触診などによっても診断されますが、これらと並んで重要な診断方法に「脈診」があります。
アーユルヴェーダの「脈診」は、西洋医学における単に脈拍数を計るということ以上に、現在の身体の状態を診てとり、どのような病気に罹っているのか、過去にどのような病歴・怪我があったのかというような診断を行える技術とされています。
脈診の基本は、橈骨動脈(手首の親指の側にある骨の出っ張り/橈骨突起のやや下の部位)に三本の指(人差し指、中指、薬指)を並べて脈を診ます。
三本の指において、どの脈が強く感じ取られるかにより、その時々の優勢なドーシャを診断することができます。
ヴァータは人差し指、ピッタは中指、カファは薬指で感じられるとされ、ヴァータの脈拍は速く弱く、ピッタの脈拍は熱く強く、カファの脈拍はゆっくりと穏やかに脈打つとされます。
一般に身体が活動にしている日中の時間帯は、運動を司るヴァータ脈の人差し指が強く感じられます。
一方で、身体を横にして数分休むと今度はカファ脈が感じ取れる状態となり、ヴァータ脈は少し弱くなります。
食事を取った際も、食後消化が始まると消化・吸収を司るピッタの脈が優勢になり、しばらくすると再びヴァータの脈が強くなっていきます。
このように1日の間においても、それぞれドーシャの優勢(働き)は身体の活動状態によって変わり、アーユルヴェーダの脈診ではそれらの情報を感じ取ることができます。
ドーシャの診断から、身体におけるドーシャ・バランスが乱れた状態が現れた場合、アーユルヴェーダではオイルマッサージと心身浄化法(パンチャカルマ)が勧められています。
オイルマッサージはアビヤンガとも呼ばれ、施術者による全身のオイルマッサージが行われます。
アビヤンガでは、ドーシャの体質診断からアーユルヴェーダ医によって処方されるハーブを含んだオイルが用いられ、マッサージによって皮膚から体内にオイルを吸収させることによりドーシャの乱れを鎮静化させます。
アーユルヴェーダでは、家庭でも行える日々のゴマ油を用いたオイルマッサージの効果も説いており、特に頭や耳、足の部位に対するオイルマッサージを習慣とすることをすすめています。
ゴマ油は市販の食用のもの(太白ごま油など)を、100度以上の温度で20~30分程加熱し、自然に冷まします。
マッサージは、あまり強く擦らず、自身が心地よい程度の強さで行います。
一方、心身浄化法(パンチャカルマ)は、サンスクリット語で「パンチャ(pancha)=5つ」の「カルマ(karma)=行為」の意味であり、具体的には催下法(ヴィレチャナ、下剤療法)、催吐法(ヴァマナ)、経鼻法(ナスヤ)、浣腸法(バスティ)、瀉血法(ラクタ・モクタナ)の5つの方法で、体内から過剰なドーシャ(病素)を排泄させて身体を浄化させる治療法です。
パンチャカルマでは、前処置としてオイルマッサージも行われますが、このパンチャカルマはアーユルヴェーダの医療行為であり、実施にはアーユルヴェーダ医の指導・管理のもとで1~2週間の時間をかけて行われるものです。
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