これら3つのドーシャはすべての人の体内に存在しており、アーユルヴェーダではこれらのドーシャが身体においてバランスがとれている状態を健康としますが、そのドーシャのバランスが最も良い状態というのは個々人によって異なります。
ドーシャのバランスは生まれもったものであり、個人の体質や身体的・精神的な特徴が決まる要素にもなりますが、この個々人における最適な状態(資質)をプラクリティ(Prakriti)、つまり「その人自身にとっての本質」と呼んでいます。
プラクリティとは、受胎の瞬間に決まるドーシャ(ヴァータ・ピッタ・カパ)の基本的なバランスを指し、その人の身体的特徴や体格、消化力、性格傾向、病気へのなりやすさなどに影響を与えるとされています。
プラクリティは基本的に一生変わることのない、その人固有の体質と考えられています。
一方、ヴィクリティ(Vikriti)は現在の身体や心の状態を表す概念です。
生活習慣、食事、ストレス、季節の変化、環境などの影響によってドーシャのバランスが崩れると、本来のプラクリティから離れた状態になります。
この状態をヴィクリティと呼びます。
アーユルヴェーダの診断では、まずその人の生まれ持った体質であるプラクリティを理解し、次に現在の状態であるヴィクリティを観察します。
そして両者の違いを把握することで、どのドーシャが乱れているのかを判断し、食事や生活習慣、ハーブ療法などによってバランスを整えていきます。
このように、プラクリティとヴィクリティを区別して理解することは、アーユルヴェーダにおける体質診断や健康管理の重要な基礎となっています。
またプラクリティは、生まれながらのドーシャのバランスを指しますが、これらのバランスは、生命誕生の折、父母の「受精」の段階で定められるといわれています。
具体的には、皮膚・血液・肉・脂肪・骨髄・心臓・両肺・肝臓・脾臓・胃・腸などは母親から、毛髪系・爪・歯・骨・脈管・精子などは父親から受け継ぐものと考えられています。
その一方、人の精神面については、「人は精神と身体がひとつとなってはじめて生命として存在する」というインド伝統思想に基づき、精神に現れる様々な現象や症状、そしてその発生時期は、生まれてきた個々の生命固有のものであり、それら生命が受肉する以前の「生」から受け継いできたもの、と考えるところがあります。
これはインド伝統思想における「カルマ(Karma)」思想に基づくものですが、過去幾たびかの「生」の期間に積み上げられた「行為」「思考」「欲望」が「ヴァーサナー(潜在的傾向・習慣的傾向・痕跡、Vasana)」として精神に残り、次の生において「サンスカーラ(業、Samskara)」として、個々人の生まれつきの性格や行動傾向を決定し、その精神のありようが身体にも影響を与えるとされているのです。